個展開催当日に、会場に貼らせていただいたポスター。今回の個展は、「駒の後ろに作者が見える」をテーマとして掲げた。 |
上記の日程・会場で、駒師としての号・酔棋こと増山雅人の、「第3回個展」を開催しました。お忙しい中、個展にご来場いただいたみなさんに、あらためてこの場でお礼を述べさせていただきます。
左に掲載したポスターは、個展会場に貼ったものです。
2001年9月にホームページ『駒の詩』を開設してから、早いもので今年で8年目を迎えます。ありがたいことにこのHPへのアクセス数も、2009年の10月現在で14万5000を超えました。
私(酔棋)が駒を作りはじめたのは、第1作が1977年5月に完成ですから、今年(2009年)で30年以上になります。私自身もこんなにも駒を作ることになるとは、夢にも思いませんでしたが、今回の個展の開催時で制作数も314組となりました(2009年10月現在317作)。
前回の「酔棋制作駒『第2回個展』-使われてこそ名駒-」(▼別項参照)以来、4年ぶりに今回の第3回個展を開催しました。当日の初日(4月11日)は、「『駒の詩』第2回将棋大会」(▼別項参照)も催しましたので、将棋大会参加のみなさんをはじめ個展にいらしていただいた方々で、会場はにぎわいました。
自らの証しのひとつとして駒を作りつづけてきた私としては、みなさんに作品を見ていただくことは、この上ない喜びでもあります。また、駒や将棋を通して新たな人々とふれあうのは、何ともいえない至福の時間でもありました。
今回の開催時期は、ご存じのように百年に一度といわれる不況の最中、駒好きにもその風は押し寄せていたようでした。前回は遠くからいらした方も数多くいましたが、今回は開催場所である東京近郊のみなさんが主でした。そのような社会的状況の中でも、会場にて駒についてみなさんといろいろとお話ししたり、「第4回オフ会」(▼別項参照)で飲みながら駒談議をしたりと、私自身もとても有意義なひと時を過ごせたと、あらためていらしていただいたみなさんに感謝しています。
今回の個展のテーマとした「駒の後ろに作者が見える」については、下記に掲載した「第3回個展コンセプト」と「個展パンフレット」をご覧ください。
お祝いのお花。 |
かつては同じ駒作り仲間であった漫画家の永島慎二氏(2006年没・別項「永島慎二レクイエム」参照)の奥様をはじめ、私の友人や駒作り仲間、それに仕事関係の人たちからお祝いのお花やお菓子をいただいたのは、いくら感謝しても感謝しきれません。
最後に、このたびの個展開催・将棋大会・オフ会の一連の催しの、設営や運営などを手伝っていただいた、私の友人の三上勉氏、池田登志男氏、樋村和己氏のそれぞれのみなさんをはじめ、いつも何かとお世話になっている将棋駒研究会会長・北田義之氏には、感謝の言葉もないくらいです。
みなさん、ほんとうにありがとうございました!
駒の後ろに作者が見える
上記の言葉は、酔棋制作駒「第3回個展」でコンセプトとしたものです。また、これらは「第3回個展パンフレット」(下記参照)の表紙にも掲げていますし、「巻頭言」でその由来も書きました。そこで、その「巻頭言」を抜粋して掲載してみます。
第1回個展(1991年)は「棋は鼎談なり」、第2回個展(2005年)は「使われてこそ名駒」をそれぞれテーマとした。今回の第3回個展で掲げたのは「駒の後ろに作者が見える」である。この言葉のもともとの源流は、私の駒友であり「心の師」でもあった、すでに亡くなられた漫画家の永島慎二さんが、私に語っていた駒論「本当にいい駒とは、技術的なうまさではなく、駒の後ろにその作者の影が見えてくる」をヒントに、私自身も使うようになった。今回出品した駒たちに、酔棋の影が少しでも見え先の言葉に近づけられれば、向こうの世界で永島さんも喜んでくれるのかもしれない。
上に掲載した私のイラストは、第1回個展のときに永島さんが描いてくれたものだ。個展会場に、永島さんも来てくれているような気がする……。
▼第3回個展パンフレット
個展開催中に自作のパンフレット(左写真)を頒布いたしました。実費として300円いただきましたが、実質的な制作コストはそれ以上かかったかもしれません(笑い)。まだ、手元に残してありますので、駒を依頼された方に差し上げたりして、それなりに活躍(?)しています。
B5判両面カラー印刷で、全部で14ページです。今回出品した駒や、HP『駒の詩』の紹介をはじめ、私の全作品リスト(簡略版)などです。それらの一部を下記に掲載しますので、興味のある方はご覧ください。
◎それぞれをクッリクしてください ※全作品リスト(簡略版)をご覧いただけばおわかりのように、最近はともかくかつては「不詳」が多くなっています。私としてもいずれははっきりしたいものと思いますが、当時の記録があいまいでやむをえないことですので、苦笑いしつつも懐かしさもひとしおです。 |
ずらりと並んだ展示駒。駒の詳細は、最下段の「出品作について」を。 |
大澤さん(右手前後ろ姿)をはじめとする静岡グループのみなさんと、北田さん(右上)とで歓談する。 |
実際の会場となった「桂」の2階はかなりの広かったのですが、ほとんどは将棋大会用として使用しました。展示した駒数は駒木地も含めて全部で30組くらいでしたので、上写真のスペースで十分といえました。おいでいただいたみなさんも、お茶を飲む場所や歓談する場所も設けてありますので、比較的ゆっくりとできたのではないでしょうか。
「将棋大会」の運営のほうは三上氏にお任せして、私は久しぶりにお会いする懐かしい友人や駒仲間ともっぱら駒談議に花を咲かせました。ネットから応募いただいたみなさんとは、初めてお会いする方も多く、まずは名刺をお渡しして駒に関する話や質問をうかがったりもしました。
駒師の号・東世で知られる大澤建夫さんをはじめとする静岡の駒作りグループのみなさんは、お祝い持参で遠く静岡からおいでいただいたき、この場を借りてあらためてお礼いたします。北田さんと静岡グループのみなさんで、お茶を飲みながらしばし歓談しました(左写真)。
また、将棋駒研究会のメンバーや駒作り仲間である、杉さんや荒川さん(号・晃石)、上村さん(号・江仙)、中沢さん(号・蛍雪)それに平田さん(号・雅峰)も、お祝い持参でいらしていただき感謝しています。
将棋大会で対局に疲れた方々も、頭の骨休みとなるのか、合間にちょくちょく駒をのぞきにいらっしゃいます。予選で負けた方たちに、展示した駒が少しでも癒しとなれば、作った私としてもうれしいかぎりです(笑い)。
▼写真拡大 |
会場にいらした方には、芳名帳にお名前を書いていただいたあとに、まず根付抽選(右写真)をしていただきました。これらの根付には、彫り駒から盛り上げ駒までいろいろとありますが、なかでも最も多いのは盛り上げ駒となっています。私が1組の駒作る場合、通常は2枚余り歩を作るのですが、駒木地がさらにあれば3枚作ることが多いからです。
ですからこれまでに、相当の数の余り歩が手元に残っていました。そこで、今回の個展会場にて、その余り歩(50個以上)で根付を作って抽選でみなさんに差し上げたのです。おそらくこのHPをご覧いただいているみなさんの中には、携帯のストラップとしてこの根付を使っていただいている方が多いことでしょう。
先のパンフレットの他に、同じく会場にて今回の個展用に作った2010年度版「出品駒カレンダー」(下左写真・▼別項参照)も、800円にて頒布しました。
また、拙著『将棋駒の世界』(下写真・▼別項参照)を持参の方に、ため書きを入れて差し上げたり。会場にて、DVD『駒を作る』(▼別項参照)とともにこちらも販売しました。
出品駒カレンダー | 書籍とDVD | プレゼント抽選駒 |
上記のパンフレットやカレンダーまたは本などをご購入いただいた方に、会場にて「水無瀬書柾目書き駒」(上右写真)のプレゼント抽選(4月12日午後5時)を行いました。詳細は「第6回プレゼント抽選駒」(▼別項参照)のほうをご覧ください。
今回催したような企画を考えるのは楽しいものでありますが、それを準備したり滞りなく実践するのは、実はなかなか大変なことでもあります。今回の個展に際しては、出品の駒を作りはじめたのが開催の1年ほど前で、それ以外の下準備にも3か月は優にかかっていると思います。それでも会場においでいただいたみなさんに喜んでいただけると、開催する私のほうもパワーをいただいた気がします。
観戦記者・木屋氏(左)と蛸島女流五段。 | アマ強豪の金子氏(左)と北田会長。 | 本田女流二段と笑顔の北田会長。 |
個展の初日は「将棋大会」とも重なっていたので、会場もかなり熱気を帯びていましたが、2日目は訪れる人もかなり少なくなりなりました。そこで会場にいらした方々とは、ゆっくりお茶を飲みながら駒談議したり、将棋を指したりと、比較的に落ち着いて過ごしました。
上写真で紹介しているように、かつて本を作ったこともある観戦記者の木屋太二氏、蛸島彰子女流五段、前回の将棋大会の優勝者でもあり、アマ強豪の金子タカシ氏、今回の将棋大会の指導将棋を務めていただいた本田小百合女流二段は、2日目もぶらりと立ち寄っていただきました。
私(右/酔棋)と樋村氏との記念対局。下記で紹介している樋村氏依頼の駒(長録)で指した。 | 撮影で活躍してもらった池田氏(左写真)は、会場にいらしていただいた少年と一局。 |
最初に、新作の「展示即売」した駒から紹介します。このHPのトップページに掲載している「巻菱湖(第300作)」から「酔棋好(第314作)」までのうちの、9作が「新作の駒」です。次いで前回の「第2回個展」のときに、非売品にしていた「酔棋好(第236作)」と「長録(第237作)」の2作が「旧作の駒」です。
すべての駒は、「作品ライブラリー」にリンクを貼ってありますので、詳細はそちらをご覧ください。
もしも、これらの駒の中で気に入った作品が見つかり、ご購入をお考えの方がいらっしゃれば、価格などをメールで酔棋にじかに問い合わせをお願いします。折り返しお返事いたします。「販売済」と書いてある駒は、すでに手放した駒です。
以上、よろしくお願いいたします。
新作の駒 |
巻菱湖書島黄楊虎杢 トップページに掲載。300作目にあたる「第3回個展」の記念作。 |
清定書島黄楊火炎杢 駒木地の赤い色やその味わいから、「火炎杢」と命名する。 |
無劍書紫檀拭き漆仕上げ 「酔棋流」の書き駒。紫檀の駒木地に白色漆が映える。 |
森内名人書島黄楊根杢 森内俊之九段が名人当時に駒字を書き、酔棋が駒にした2作目。 |
寉園書島黄楊柾目 「木村形」の駒木地に、木村独特の書体を朱合漆使ってを収めた。 |
奥野錦旗島黄楊根杢 比較的そろいのいい明るい根杢を、太字の奥野錦旗で仕上げた。 |
峰書島黄楊根杢 久しぶりに作った峰書。今回あらためて字母紙も作り直した。「作品ライブラリー」に掲載後、オークションに出品。 |
源兵衛清安島黄楊柾目 オーソドックスな書体を素直な柾目で、実戦向きな彫り埋め駒に。「作品ライブラリー」に掲載後、プレゼント抽選駒に。 |
酔棋好島黄楊根柾 私のオリジナル書体を、少し個性のある根柾(荒柾)の彫り駒に。 |
旧作の駒 |
酔棋好薩摩黄楊孔雀杢 以前、非売品にしていたものだが、今回の展示で即売にした。 |
長録書中国黄楊斑入り赤柾 「長録」という個性の強い書体を、斑入り赤柾に収めた。 |
■上記の駒に関する問い合わせ
酔棋(増山雅人)
Email:suiki@cam.hi-ho.ne.jp
個展以前に制作を依頼されて、個展当日に依頼者が駒を取りにいらっしゃったのが「依頼の駒」です。下記の2作となります。
俊則(花押)島黄楊柾目 依頼者は原本の「駒関連資料館・19俊則(花押)」の所蔵者。 |
長録書ブライヤー玉杢 駒木地となったブライヤーは、依頼者の持ち込みである。 |
すでにおなじみとなった非売品の「水無瀬(第150作)」、第2回個展の記念作「董仙(第250作)」、それと駒木地に独特の魅力がある「宗歩好(第280作)」。いずれも私自身がかなり気に入った駒たちです。そこですでにお譲りした駒もありますが、今回それらをお借りして参考出品としてみなさんに見ていただきました。
水無瀬書島黄楊紫雲虎斑 今回の記念作のちょうど半分の150作目の記念作。 |
董仙書中国黄楊虎目杢 「第2回個展」時の250作目にあたる記念作となった「董仙」。 |
宗歩好島黄楊淡雪杢 私が命名した極上の淡雪杢に、名人駒で知られる「宗歩好」。 |
ここで取り上げる展示駒は、いずれも別項で紹介していますので、そちらのページのリンクを張っておきます。
個展会場のプレゼント抽選駒「水無瀬書柾目書き駒(第309作)▼掲載ページへ」、将棋大会A級優勝賞品駒「鵞堂書虎斑盛り上げ駒(第302作)▼掲載ページへ」、将棋大会B級優勝賞品「清安書荒柾書き駒(第304作)▼掲載ページへ」、それに第12回オークション駒の「淇洲虎斑盛り上げ駒(第307作)▼掲載ページへ」です。
「将棋大会」使用駒(リンクは画像のみ)
酔棋の愛用駒の「龍山安清虎杢盛り上げ駒(第195作)」をはじめ、「巻菱湖書虎斑盛り上げ駒(第145作)」「清安書斑入り柾盛り上げ駒(第297作)」「錦旗紅紫檀拭き漆仕上げ書き駒(第242作)」「錦旗柾目書き駒(第263作)」などです。
実際に個展会場にて、これらの駒を使って将棋を指した方もいらっしゃいました。手触りといった指し心地も、駒の大事なポイントです。
左から、三上氏、私、北田氏、樋村氏で、乾杯! | 撮影していた池田氏が交代に入って、乾杯! |
2日目も無事にすんで、今回の運営委員全員で「お疲れ会」を近くの鰻屋で行いました。 感謝! 感謝! |