駒作りに決まった正しい方法があるわけではない。10人の駒師がいれば10通りのやり方が存在するといわれるくらい、細かいところは実にバラエティーに富んでいる。ここで紹介するのは、そのうちのひとつにすぎないあくまでも「酔棋流」であることをお断りしておく。
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私(酔棋)自身、30年以上にわたって駒作りを続けているうちに、自然と駒を作るための下のような環境もだんだんと整ってきた。現在ではどの環境が失われたとしても、駒作りに差し障りが出てくるにちがいない。歳月そのものがつくりあげたのが、現在の環境といっていいのかもしれない。
駒作りコックピット 寝室の一部に備えた作業する文机に、回転する籐の椅子。まるで飛行機やF1のコックピットのように、座ったままでいろいろな道具など取り出すことができ、作業がしやすくなっている。右に少し見えるサブ机は、実は中は将棋盤になっている。 |
駒木地ケース 現在制作中や、これから作る予定の駒木地を保管している。また、「金」や「歩」をはじめ余分な余り駒や半端になった駒木地を、大きさによってそれぞれ分けて保管している。万が一失敗などした場合に、ここから同じような駒木地を探し出して使用する。 |
デスクとパソコン 駒作りの作業は別室の文机でするが、仕事(書籍編集など)や字母紙作りなどは、フォトショップやイラストレーターを駆使して、ほとんどパソコンでする。 |
漆乾燥ケース 駒の漆を乾かすために入れておくケースは、もともとは写真のフィルムに使うものらしいが、外と中が完全に閉鎖されているので、湿度の管理が適切にできる。温度計と湿度計もつけた。 |
駒飾りケースとプリンター、スキャナー 完成した駒を飾っておくケース。現在はあまり手持ちの駒が少なくなっているので、一部駒木地も飾っている。私はパソコンで字母紙を作るので、プリンターとかスキャナーは必需品である。 |
ミニスタジオ 完成した駒などを撮影するミミニスタジオ。『駒の詩』に掲載している写真は、ほとんどここで撮影している。ライトが自由に動かせるので、撮影しやすい。 |
バックに使う布や紙 駒を撮影するには、下に敷く布や紙などが結構大事である。そこで色や模様も含めて各種取りそろえている。ところが、よく使うバックの布はどうしても限られてくる。 |
下記で紹介する以外にも、「駒作りに使えるものなら何でも使う」の精神で、試しにいろいろなものを使ってみる。まさに「ダメもと」といった感じでやっている。「100円ショップ」でよく買ってくるプラスチック製品をはじめ、ティッシュ、サランラップ、メインディングテープなども日常的によく使っている。それらの使い方については、それぞれの工程で出てくるときに解説する。
作業する文机の引き出しの中 日常的によく使う、印刀や彫り台、漆筆などをはじめ各種の道具などを収納している。その他としては、サランラップやスティックタイプののりなどがある。 |
印刀・彫り台など 駒を彫るための印刀は、かなりの数がある。彫り台などの使い方は、彫りの工程で解説。ヘッドルーペは最近ではすっかり必需品になってしまった。 |
各種溶剤 彫ったあとに使う「シェラックニス」、盛り上げの目止めに使う「水性との粉」、その他に「片脳油」「アルコール」「オリーブオイル」「椿油」「水」など。 |
筆やハケなど 漆筆は、最近では形状記憶筆インターローンを使用。ハケは彫り駒のときに使用。ペン皿は漆や片脳油などを入れて使う。 |
盛り上げ台 彫り埋め駒をとめて、字母紙をそばに置いて盛り上げる(書き駒のときも同様である)。中央が回転するので、向きが自由に変えられる。プラスチックのスプーンに漆を入れる。 |
漆乾燥台 駒を並べてムロ(漆乾燥ケース)に入れる。盛り上げの場合、ゴミやホコリがつかないように、盛り上げたほうを下にする。左のプラスチック箱は、駒銘専用である。 |
温度計と湿度計 漆乾燥ケースの中と部屋の中にも同じものを置いて、湿度や温度の違いを確かめて、水分を漆マットで調節している。 |
漆各種 盛り上げには、日本産の呂色漆を使う。彫り埋めには瀬〆漆(生漆)や中国産の呂色漆を使用。書き駒に使う絵漆、その他に木地呂漆、朱合漆、色漆なども適宜使用。 |
サンドペーパーなど各種 私が使っているサンドペーパーは、駒木地の整形や研ぎ出しに使う100番、400番。仕上げに使う800番、1200番。盛り上げ前の最終磨きとして、ラッピングフィルム、プラスッチククロス。 |