- 酔棋

駒のことなら何でもわかる!!

トップ 作り方 作品 フォト オークション 情報室 書体 名工 資料館 BOOK メール・問い合わせ

酔棋流駒の作り方5―面取り・仕上げ磨き・彫り埋め駒の完成

▼他の工程へ
1駒作りのための環境と道具2駒作りのための字母紙3彫り駒の工程・彫り駒完成
4彫り埋め作業6盛り上げ作業・盛り上げ駒の完成

▼酔棋流書き駒1「書き駒教室」用の書き駒

面取り・研磨

 前項の「彫り埋め作業」の工程で、ほぼ彫り埋めはできたようなものだが、実はまだいろいろとしなければならない作業がある。
 先の最後にふれたように、サビ漆だけの彫り埋めでは、表面に小さな穴などが生じることがある。そのまま次の段階にいくと、盛り上げの作業がとてもやりにくいことになる。つまり、表面がツラ一になっていないと、漆がうまく盛り上がらないからだ。そこで、私(酔棋)は、彫り埋めを完成させるための、簡易な盛り上げをすべての駒に行って、それから新たに研磨(400番で)している。かなり面倒な作業だが、やむをえないことと思っている。だから、ここでの「面取り・研磨」は、そこからの作業であることを了解しておいていただきたい。
 もともと「面取り」は、駒を使って将棋を指すときに、指へのあたりをやわらかくするのために行うものでだ。あまり面取りがされていない駒は、指にひっかかり違和感を感じさせることもある。また一方で極端に施された面取りは、どこかやわらかすぎてややだらしなく感じる人もいる。まさに、人によってその感じ方はさまざまなので、依頼された場合は面取りのお好みを確認することもたまにある。
 ここで紹介する面取りは、私が行っている通常程度のものを、下記写真をご覧いただきながら解説していく。

面取りが終わった「新龍の玉将」
下記の工程を経て、面取りが完成する。私の面取りは、上写真の赤丸()部分をやり、青丸()の部分はやらない。つまり、将棋盤に接着するところだけを面取りしていることになる。

1.駒尻を研磨

 彫り埋め状態が完成した駒(400番できれいにした)を、さらに細かいサンドペーパー(800番)を使って、より表面をきれにする。水研ぎ用の800番でも、まだ水は使わない。新聞紙1枚を4つ折りにしたものを下に敷く。まずは駒尻から。

2.サイドや天を研磨

  手にしっかりと持ち、駒の両サイド(側面)を研磨する。力を均等に入れないと、片減りするから注意する。駒の天(てんぺん)を研磨。このとき少しでも片減りすると、天を下にしたとき駒が立たなくなるから、注意深く慎重にやる。

3.表裏を研磨

  駒をしっかりと持ち、両方向(左右)に回す感じで研磨すると、片減りが防げる。上下にすると、上が片減りしかねない。このやり方は、すべてのサンドペーパーでも同様である。

4.サンドペーパーで面取り

 駒を少し浮かせて持つ。上で説明したように、駒が盤面につく部分のすべての箇所を、軽く面取りしておく。天の部分は、持ち方も含めとくに注意する。

5. 布ペーパーで面取り

  800番でやっただけだと、どうしても角張っているから、布ペーパー(600番)を使って、前の工程で軽く面取りした箇所を、丸みを帯びた面取りに仕上げる。曲がりやすい布ペーパーは、指になじみやすい。

6.水を使って研磨

  水研ぎ用のサンドペーパー(1200番)で、水を少し垂らして駒の表裏を両方向に回す感じで研磨する。駒はすぐに布で水分はふき取る。サイドや駒尻は、盛り上げ用の目止めをすませてから行う。


盛り上げ用の目止め・仕上げ磨き・彫り埋め駒の完成

 酔棋流は、面取りをすませてから、最後の仕上げ磨きをするが、この順序は逆でもいい。最後の1200番だけに水を使うのには、それなりの理由がある。駒はやはり木だから、できれば水を使いたくないのだ。しかし、彫り埋めが終わっ駒には小さな漆の粉みたいなものが付着している。それをきれいにするには、水研ぎはいいのである。
 上の作業が終わった駒に、盛り上げ用の目止め(盛り上げたときに、漆が木地ににじまないようにする)を施す。この作業により盛り上げの準備が可能になるだけでなく、彫り埋め駒としても完成することになる。だから、基本的にはどんな彫り埋め駒でも、新たに磨き直し目止めさえすれば、盛り上げ駒に変更することは可能なのである。

彫り埋め駒の完成
「新龍」の彫り埋めが完成。酔棋流としては彫り駒(彫って呂色漆を入れて研ぎ出した駒)の延長が彫り埋め駒で、またその延長が盛り上げ駒だと考えている。だから、この段階で漆を盛り上げるのをやめれば、まさに「新龍薩摩黄楊孔雀杢彫り埋め駒」となるわけだ。

1.盛り上げ用目止め道具

 研磨した彫り埋め駒、水性との粉(白とけやきをブレンドして使う)、漆マット(目の細かいスポンジでも可)、皿のような容器(何でも)、乾いた布など、厚ゴム板、ラッピングフィルム、プラスッチッククロス。

2.目止め溶剤を付着

  漆マットを水につけ、それを絞りやわらかくする。ブレンド(白とけやき)した水性との粉を、スポイトで漆マットに数滴たらして含ませる。駒の表裏にその溶剤を付着させる。

3.付着した溶剤をふき取る

  駒の表面に付着した溶剤を、布ですぐに布でふき取る。これを2回繰り返す。駒の表面に均等に少し付着するだけで、目止めの役割を果たす。

4.余分な目止めを取る

  駒の表裏以外の駒尻、側面、天(てっぺん)にはみ出してついた余分な目止めを、サンドペーパー(1200番。水は使わない)で一枚ずつ取る。

5. 駒の天が立つように

  前にも書いたが、駒の天の部分はちょっとしたことで、崩れやすくなる。そこで、私は駒の天が立つかどうかを確認している。まれにだが、どうしても立たなくなることもある。

6.ラッピングフィルムで研磨

  厚いゴム板(新聞紙を一日分重ねてもOK)などを下に入れて、ラッピングフィルム(4000番)を使って、駒の表裏を回す感じで軽く研磨(表面の溶剤を整える)。ちょっとしたゴミなどが入ると、すぐに駒が傷つくから要注意!

5. きれいに仕上がる

  研磨されてきれいになった「玉将」。このとき余分な溶剤が取れているので、軽くティッシュや布でふき取る。

5. プラスチッククロスで磨く

  盛り上げる前の最後の仕上げ磨きとして、駒のすべての面(表裏、駒尻、側面、天)を少し力を入れる感じでプラスチッククロス磨く。研磨剤が入っているので、表面はピカピカのつら一になる。

次へ

▼他の工程へ
1駒作りのための環境と道具2駒作りのための字母紙3彫り駒の工程・彫り駒完成
4彫り埋め作業6盛り上げ作業・盛り上げ駒の完成

▼酔棋流書き駒1「書き駒教室」用の書き駒

 

 

トップへもどる
駒の詩