振り返ってみると駒にかかわってから現在まで、多くの収集家の駒や雑誌の取材などを通じて数多くの駒とめぐり合ってきた。それらの写真やコピーなど、膨大な資料となって今でも手元に保存してある。それらの資料から新たに字母紙を起こして、2014年現在70種ほど、『酔棋字母帳』としてデータにしまとめてある。
古来伝わる伝統的な書体はもちろんのこと、なかには字母資料は残されていたとしても、たぶん駒として作られてこなかったものなども含まれている。また、私(酔棋)自身がオリジナルとして作った書体や、私の友人でもある「将棋駒研究会」会長・北田義之氏(号・如水)が作ったものや、二人で駒字にしたものなどもある。まだ、先の『酔棋字母帳』にこれからも増やしていく予定でいるので、おそらく最終的には100種類以上になるのではと考えている。
「字母紙は駒師の命」ともいわれるので、その一端を下記の写真でご覧いただきたい。
詳細は各写真に解説してあるから、そちらを読んでいただくとおわかりになることだろう。ただし、このような字母紙作りはすべての駒師が行っているわけではなく、あくまでも「酔棋流」ということで了解しておいてほしい。
『酔棋字母帳』字母紙選び 実際に駒を作るときに、『字母帳』から字母紙を選び出すのは、駒師として至福の瞬間でもある。「この駒木地なら、これを作ろう。これならこの書体だなあ」。とはいえ、依頼された場合は、そうはいかないのが現実だが(笑い)。 |
各種『字母帳』 左から『酔棋字母帳』『酔棋字母帳予備(書き駒用反転字母)』『酔棋手作り字母』『字母制作予定(元資料)』。元資料とは、実際の駒のコピーや写真である。これをパソコンで加工して、データの字母紙を作る。 |
手作り字母紙 パソコンで字母を作るようになったのは、2003年ごろからだから10年以上はたつ。その前まではこの写真のように、コピーで駒字を2〜3倍に拡大し、ていねいに黒く塗り、それを縮小して字母紙として使っていた。 |
「新龍」字母制作 まずは、実際の駒のカラーコピーをスキャナーで取り込んで、それのパスを作り駒字とする。ちなみにこの実物の「新龍」は、奥野作のものを影水が直した駒ではないかといういわれがあるものだ。 |
フォトショップデータ「新龍」 「玉将」をはじめ数々の駒字のデータ。これをイラストレーターに配置して、「新龍」の字母紙にする。 |
イラストレーター字母 パスを作ったそれぞれの駒字を黒く塗り、太さや大きさなどを好みで加工し、その完成したそれぞれの駒字を、1書体「新龍」がA4判に収まるように配置する。 |
「新龍」由来 下の部分に、その書体「新龍」の由来なども書いておく。完成した字母紙をスーパーファイン紙できれいに印刷し、『字母帳』に収蔵する。 |
『酔棋字母帳』 完成した字母紙を収蔵した『酔棋字母帳』のカバー。同じ書体(たとえば「錦旗」など)でも作者によってかなり変わってくるので、いろいろなバージョンを作ることもある。 |
タイプ用紙に字母紙をコピー 書体をコピーする薄紙は何でもいいとうわけではなく、彫りに適して(シワが寄らない)印刷が可能でなければならない。私は「タイプ用紙タイ−10」を使っている。2枚で1セット。 |