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「歩兵」の彫りでも、少しは駒字の強弱が表現できただろうか。 |
私(酔棋)のオリジナル書体の一つ、「酔棋好」の彫り駒である。本来この書体は、駒字の強弱(細いところと太いところ)があるところから盛り上げ駒に向いていると思うが、彫り駒でもなかなか特徴が出ているのではないだろうか。使用した漆は、今回はオーソドックスな呂色である。
書体そのものの成り立ちなどは、別項
「書体への誘い・酔棋好」をご覧いただくとして、「第3回個展」(2009年4月開催)に同じく出品した
(第236作)をはじめとする盛り上げ駒の「酔棋好」と、ぜひ見比べてもらいたい。
使用した駒木地は「根柾」なのだが、その木目が粗いところから、「荒柾」と分類してもいいのかもしれない。そのあたりは、左写真の「歩兵」のアップをご覧いただきたい。これは私の好みなのだが、同じ柾目でも「糸柾」(糸のように細い柾目)のような素直なものよりも、ややひねくれた感じの柾目のほうが、駒にしたときは個性が出ておもしろいと思っている。
人間のひねくれたのはちょっと困りものだが、駒としてはひねくれた素材はなかなかおもしろい味わいをもたらすのである。