「奥野錦旗」は、比較的依頼されることが多い書体の一つである。ところが意外なことに、私は盛り上げ駒を得意としているわりには、これまでに「奥野錦旗」の盛り上げを作ったのはたったの1組だけであった。
たぶんその理由は、実物の奥野作(別項
「名工の轍・奥野一香」参照)の「錦旗」を最初に拝見したのが、彫り駒だったことからかもしれない。その駒の漆がやや茶がかっていたのが、やけに印象に残ったのである。そこで、「奥野錦旗」というと彫り駒というイメージが自然とでき上がり、彫り駒を作ることが多かったのであろう。
ちなみに、この「作品ライブラリー」にも
(第201作)(第225作)(第257作)、「オークション」では
(第244作)、「プレゼント抽選」では
(第267作)と、計5作もの彫り駒を掲載している。
今回、久しぶりに依頼で「奥野錦旗」の盛り上げ駒を作ってみた。素朴な柾目に、やや太めな力強い駒字が収まった漆の盛り上がった感じは、何ともいえずいいものだと再認識した。
今回のこの駒をきっかけとして、自分流にアレンジを加えた「奥野錦旗」の決定版を作ってみたくなった。いずれそのような駒が完成したら、みなさんにお目にかけるのを、私自身も楽しみにしている。