酔棋好黄楊赤虎斑盛り上げ駒
酔棋作(第222作)
盤駒店で販売済み
酔棋好島黄楊板目彫り駒 酔棋作(第219作)前田慎司氏所蔵 |
「酔棋好」初期バージョン※この駒は「酔棋好」の初期バージョンである。また、実際にHPをご覧 いただいている10000番目のキリ番の方(「酔棋からのお知らせ」2002年8月参照)へプレゼントさせていただいたものだ。第215作「酔棋好」を少し作りはじめて放置しておいて、第219作を一気に制作したので、制作順(途中に何組か制作した)が逆になった。再び第215作にとりかかるとき、裏字がいまひとつの気がして全面的に裏字を作り直すことにした。 |
※左は、上段から初期バージョンの「龍王」「龍馬」「成銀」「成桂」「成香」、右はそれらの完成バージョンである。 ※『五体字類』より抜粋。○印の文字から「龍王」「成銀」「成桂」など、裏字の駒字を作成。 |
最近では、パソコンを活用しての書体作りや管理が多くなった。つまり、デジタルで作成したもので、アナログの最たるものと思われる駒を作る。これは、なかなかおもしろく味わいもあるので、実際の駒作りはもちろんのこと、書体作りだけでも深夜にまで作業が及ぶこともしばしばである。
また昨今では、インターネット将棋がはやり、デジタルの駒で将棋を指すのも当たり前となり、実際の駒が必要とされなくなりつつある。しかし、対局相手を前にして、実際の盤駒で指すのが、何といっても将棋の醍醐味ではないだろうか。それこそが、私が標榜する「棋は鼎談なり」で、将棋好きなら、まさに至福の時だろう。ぜひみなさんにも、それを味わっていただきたいものである。
お気に入りの駒(それも黄楊と漆を使ったもの)を最低一つは手元に置いてほしい。それを長年にわたり、対局や研究で指して使えば、かえがたい永遠の棋友となることだろう。そうなれば、将棋のおもしろさにどっぷりとハマる(笑い)のは、まず間違いのないところだ。
長年駒を制作してくると、いろいろな書体を制作するようになる。その中で、お気に入りの書体にこだわって作りつづけるのも一興だが、自分独自の、つまりオリジナル書体を作ってみたくなってくる。 これまでにも、いくつかオリジナルの書体を作ってきた。たとえば、中将棋からある字を厳選し、それにない字(と金、成銀など)は他の駒を参考に作成した「清正好」などもその一つだ。
今回の「酔棋好」は、パソコンフォントを変形するなどいろいろと加工して、まずは「酔棋好」初期バージョンを制作。その後、裏字がいまひとつ気に入らなかったので、『五体字類』(上の資料参照)から、気に入った「龍」の字を抜粋し、「龍王」「龍馬」を作り、「成銀」から「成香」までを全面的に作り替えた(上の写真参照)。「と金」は元字がよかったので、そのまま使用した。
「酔棋好」そのものの由来については、だいたい上記の記述でおわかりであろう。その詳細にふれる前に、駒字(書体)のそのものの基本について少し述べておきたい。
番太郎駒や略字駒などのように作者名が駒銘に入らないものは、ここでは対象外とする。まず、表字は「行書」か「楷書」、裏字は「草書」が基本だが、なかには表裏ともに「草書」というものもある。また、表裏にかかわらず、「篆書」(てんしょ)や「隷書」(れいしょ)が主体となった駒字も結構ある(「書体への誘い」でも、それらをいずれ紹介の予定)。
「玉将」から「と金」まで、すべての個別の駒字にも『暗黙の決まりごと』が見受けられる。たとえば、「玉将」と「王将」2枚が普通だが、なかには双玉といわれるように「玉将」2枚という書体もある。「龍王」の『龍』は最後のハネが上に上がる「昇り龍」であり、「龍馬」の『龍』は最後のハネが下がる「下り龍」となっているのが、最も多く見受けられる。「玉将」の『将』と「金将」の『将』は大きさの違いだけで、「銀将」の「将」はさらに崩し字の表現がされている。まだ他にも細かいところはあるが、それらは順次紹介しよう。
下の「酔棋好」の字母紙を見てもらえばわかるように、この書体も上記の基本(表が行書、裏が草書)や『暗黙の決まりごと』を考慮して制作してある。つまり、初期バージョンでは「龍王」「龍馬」がそうなっていなかった(両方とも昇り龍)が、私としてはそれが気になっていたので、作り替えたのだ。
下の字母紙は、当然なことにパソコンで私が制作。実際にはA4サイズで作ってあるので、2枚あれば、駒を1組作ることができる。最後になったが、「酔棋好」の名づけの由来は、古来からある「宗歩好」や「阪田好」をまねたもの。私自身が気に入った駒字という、そのまま意味で名づけてみた(完成は2002年9月)。もちろん駒師だけでなく、みなさんも気に入った字で駒を制作してもらっても、「○○好」という駒銘にしてもいいのでは……。
「酔棋好」の字母紙 |