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書体への誘い 15 木村名人書<きむらめいじんしょ>



別カット

木村名人書薩摩黄楊稲妻杢盛り上げ駒
酔棋作(第173作)
榎本直行氏所蔵


木村作の特徴が表れた書体

特徴のある「と金」

 別項「名工の轍・木村文俊」で取り上げている、木村義雄十四世名人の実弟・木村文俊しか、そのいきさつからして本来なら作らない、または作れない書体といってもいいのが、この「木村名人書」であろう。
 現在でこそ、お二方とも鬼籍に入られているので、他の駒師が作った「木村名人書」も、市販の駒でもときどき見かけることもある。依頼を受けた場合にかぎり、私(酔棋)も現在までこの作品も含めて2組だけ作っている。
 「木村名人書」の特徴は、何といっても「と金」の駒字であろう。掲載した「と金」の字母紙をご覧になっておわかりのように、2画目(横棒)の「」のところが飛び出しているのは、「木村名人書」だけといってよい。
 駒字として全体的にいえることは、表字の1文字目と2文字目の間(たとえば「玉将」なら「玉」と「将」の間のこと)が比較的あいているのも、この書体の持ち味なのかもしれない。
 先の「名工の轍」に掲載している実際の木村作の「木村名人書」をご覧になっても、際立った特徴ともいわれている、筆のハイリやハネが鋭いのが、おわかりいただけるのではないだろうか。


■「木村名人書」の由来

 言うまでもなく木村義雄十四世名人(1905〜1986年)は、実力制の最初の名人で、戦前から戦後にかけて無敵名人と称された不世出の大名人である。その名人の威光を受けて木村文俊の駒作りもあったとされるのは、周知の事実であろう。
 その背景からして、木村名人が駒銘を書いたのも、駒師としての弟・正利(本名で文俊は駒師名)を守り立てるためという兄弟愛が垣間見えると思うのは、うがちすぎだろうか。
 駒師・木村は、その名人の庇護の下に、やがて「木村形」というやや細長の独特の駒形で、「木村流」の駒作りを完成させていく。その集大成のひとつこそが、兄弟のコラボレーションで創り上げた「木村名人書」なのではないだろうか。
 別項「書体への誘い・関根名人書」をはじめとして、この「木村名人書」の他にも「大山名人書」「中原名人書」「谷川名人書」などの「○○名人書」が、いろいろな駒師の手で作られている。

将棋王国すみだ

 
開催期日/2004年3月4日〜24日
開催場所/すみだリバーサイドホール

上記の期間・場所で、墨田区役所によって開催された「将棋王国すみだ」では、墨田区にゆかりのある木村義雄十四世名人と駒師・木村文俊の写真などが掲載された。私も見てきたので、役所にご了解いただき、その模様をここに少し紹介する。

壁一面に木村名人の時代を追った写真館。

墨田区内の将棋関連スポット

1 本法寺(横川1-12-12)/将棋家元三家の一つ伊藤家の墓
2 宗印屋敷跡(両国4-30-4)/8代伊藤宗印の屋敷跡(現在は両国亭)
3 木村文俊の将棋店跡(文花1-17-13、文花1-1-3)/疎開で焼失移転
4 木村一家の旧居跡(業平5-12-16)/現在は柳島寿々喜園がある
5 幸田露伴の旧居跡(東向島1-9-1)/作家の露伴はかなりの棋力
その他
 などがあるので、機会があれば散策するのもいいだろう。

駒師・木村の盛り上げ作業。
押上にあった木村盤駒店。

 

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