応募期間・2011年7月17日(日曜)19時〜8月27日(土曜)21時 応募終了しました! 「プレゼント抽選第9回」応募人数は50人でした。 |
いつも『駒の詩』をご覧いただいているみなさんへの感謝の意味も込めて、酔棋からの「駒プレゼント抽選の第9回」を企画しました。 ■駒プレゼント(当選1名)
「真龍董齊島黄楊柾目書き駒」紹介
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磨き上げた歩の駒木地。 |
字母紙で漆を転写する。 |
左が正規の「真龍董齊」の字母紙。それを反転して置き目紙にコピーで転写したのが、右の字母紙。これがハンコの役割をして、駒に字を写すのである。 |
まずは、今回のプレゼント駒となる「真龍董齊」のそのものについては、後述することにして、いい機会ですから「酔棋流書き駒」についてここで少しふれておきます。
「作品ライブラリー」(インデックス▼別項参照)の14作(2011年7月現在)の掲載をはじめとして、これまでにもおそらく数十組の書き駒を私(酔棋)は作ってきました。第1作の書き駒は、「あの駒は今・1.新宿ゴールデン街に駒音がする―将棋酒場[ 一歩(いちふ)]」(▼別項参照)の後半に掲載している「淇洲(第117作・1993年制作)」です。現在の書き駒の製法は、その初期のころとは少し異なっていますが、それほど変わっているわけでもないので、ここに掲載した写真とともに、あらためて「酔棋流書き駒」の製法を大まかに説明しておきます。興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。
最初に必要なのは、書き駒用(下絵置き目紙/美濃和紙などの薄紙)の字母紙(左写真参照)です。下絵置き目紙は、蒔絵などにも昔から使われています。もちろん併行してもかまわないのですが、次に盛り上げを作ってもいいような状態まで駒木地を完璧に磨き上げます(右写真上段・歩の駒木地)。それをハンコと同様に、反転した字母紙に絵漆(または弁柄漆/やや赤みががった焦げ茶色)で駒字を縁取りし、ティッシュなどで多すぎる漆を吸い取り、それを駒木地に転写します(右写真下段/字母紙が載っている歩)。たとえば歩なら、4、5枚は転写できます。少しでも駒字がズレると台無しになりますから、細心の注意を払います。
字母紙を外すと、漆が転写されている。 |
字母紙を参照しながら、漆のアタリがついた個所を目標に漆を盛り上げていく。 |
字母紙を外すと、漆のアタリが駒木地に転写されています(左写真上段)。この漆のアタリを頼りに、通常の盛り上げの工程と同じように、盛り上げ台を使って字母紙を参照しながら漆を盛り上げていきます(左写真下段)。あとは、乾燥台に駒を並べてムロでしっかりと漆を乾かします。漆の乾燥の難しさは、盛り上げとまったく変わりませんので、ここで湿度が多すぎたりすれば、漆にシワが寄り失敗となります。
この「酔棋流書き駒」の製法について、いくつかポイントをあげておきますので、駒作りそのものや工程に興味のある方は参考にしてください。
1.実をいうと彫り駒よりも、工程にいろいろと細心の注意がいるなどかなり面倒なので、書き駒のほうがかえって大変かもしれない。
2.反転した置き目紙の字母紙作りにかなり手間がかかる。つまり通常の反転コピーでは、置き目紙が薄すぎてうまくいかないので、コピー紙に抱き合わせたりする工夫がいる。
3.まっさらの駒木地を、盛り上げまでのように磨き上げるのは、根気と努力がかなり必要だ。また、盛り上げ用の目止めにも工夫がいる。
4.絵漆で反転駒字を書くとき、少しでもはみ出すと仕上がりまで残ってしまう。少なすぎるのは盛り上げるときに足せば何とかなるが、はみ出したものはどうしようもない。
5.先にもふれたが漆の盛り上げや乾燥時の難しさは、通常の盛り上げ駒と何ら変わらない。また失敗したときには、すぐに漆をふき取っても、どうしても駒木地に残ってしまうので、磨きの工程を最初からやり直さなければならない。
以上のような面倒さがつきまとうからなのか、何人かの駒師仲間にもこの書き駒の作り方を説明したこともありますが、追従する方はほとんどいないといっていい状況です。
通常盛り上げ駒を長い間使っていると、漆が摩耗したりハガレが起こったりします。これは製法においての目止めや駒木地の差異はあるかもしれませんが、バシバシ長いこと使っていればどうしても生じてしまう現象といえるでしょう。その場合、漆が飛んだり彫り埋め駒みたいになった盛り上げ駒は、作り直す駒師さえいれば再度盛り上げに復活させるのは可能です。
これは私見ですが、強度の点からいっても書き駒も下地の彫り埋めがないだけで、盛り上げ駒とそんなに違いはないと思われます。今回のプレゼントに当選した方は、そのあたりも念頭において遠慮なくビシバシ指して使っていただければと思っています。もしもそのような状態にこの書き駒がなったとしても、私が駒作りを続けている間なら、直すこともできますから(笑い)。
さて、この「真龍董齊」という書体を説明しておきます。「駒関連資料館・23 書体不詳(董齊?)島黄楊板目彫り埋め駒/真龍造」(▼別項参照)で紹介している駒が原本となっています。そこにも書きましたように、いずれ字母紙を作って実際に駒にしてみようと考えていました。今回それを書き駒として実現させたわけです。その書体の由来などは、そちらをお読みください。なお、このプレゼント駒も、原本と同様に「双玉」仕立てで作りました。
「真龍」という古くからの受け継がれた駒師(工房)の作った、伝統的な「董齊」と思われる書体ということから、「真龍董齊」という書体名にしました。実際に元の字母紙を作るにあたっては、もともとの駒そのもがそろっておらず、かなり苦労しました。それでも、このように復元できたことは、現代の駒師として格別な思いもあります。
実際の現物の駒も比較的小さかったので、作ったこのプレゼント駒もやや小さめとなっています。当選なさった方がお使いいただき、駒の断片的な歴史に少しでもふれていただければ、作って提供した者としてこれ以上の喜びはありません。もしも、ここで掲載しているよりもさらに大きな写真が見たい方は、「フォトライブラリー」(▼別項参照)へ行って「▼オークション出品・プレゼント抽選・将棋大会」(下のほう)で、作品番号(No.329)をお探しください。
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それではみなさん、下段の「フォーマット」からぜひ応募してみてください。
なお、当選者(1名)にはプレゼントの駒(上写真右の平箱に入れて)の他に、いつも差し上げている駒の写真数枚、写真CD、駒カードも同封いたします。
『駒の詩』をご覧いただいているみなさんは、すでに『将棋駒の世界』(▼別項参照)をお読みいただいている方が多いと思いますが、もしもご希望があれば、ため書き「使われてこそ名駒・棋は鼎談あり・駒の後ろに作者が見える」のどれかを書いて1冊差し上げます。当選者は、その旨お知らせください。
■余り歩の根付と拙著『将棋駒の世界』
「根付」と『将棋駒の世界』当選者(4名) |
石上義孝(埼玉)・森田幸高(東京)・田村恵一(大阪)・小泉和章(愛知) |
写真の4枚の余り歩根付は、表(上左写真)の書体は左から「無劍」「峰」「清定」「長録」です。長録はブライヤー(パイプに使う木材)と変わっていますが、後の3枚はすべて島黄楊です。裏(上右写真)は、同じ順番で「と金」を並べてあります。製法も駒木地もまさにいろいろですが、携帯のストラップなどに、ぜひお使いください。もしもこのプレゼントに当たった方は、これらのうちのどの根付が届くかは、実際に届いてからのお楽しみということにさせてください。
同じく『将棋駒の世界』に、もしもご希望があれば、ため書き「使われてこそ名駒・棋は鼎談あり・駒の後ろに作者が見える」のどれかを書いて1冊差し上げます。当選者は、その旨お知らせください。