『駒の詩』へのアクセス数が2014年8月で、20万を超えました。いつも『駒の詩』をご覧いただいているみなさんのおかげです。そのみなさんへの感謝の意も込めて、また例年のように開催している、酔棋からの「駒プレゼント抽選の第11回」を企画しました。
早いもので、このプレゼント企画も11回目となりました。今回は、この企画のために新たに作った書き駒です。
駒のプレゼントは1人だけですが、下記に書きましたようにDVDや本を含め、計10人のプレゼントを用意しました。
このホームページをご覧いただいている方ならどなたでも、抽選への応募はOKです。ただし、応募要件としては1人1回の応募とさせていただきます。故意の重複応募やメールアドレスを変えての応募は、原則として無効とさせていただきます。
応募いただいた方々の中から、厳正なる抽選で「当選した1名の方」に、下記写真の駒「静水島黄楊柾目書き駒」(第368作)を、プレゼントいたします。その他としては、『DVD「駒を作る」』(3名)と、『NHK駒シリーズCD』(取材・文/増山雅人)(3名)、拙著『将棋駒の世界』(3名)を抽選で差し上げます。
駒プレゼント(静水)当選者
|
お名前・小倉 祥さん(神奈川)
当選時の喜びのメール
いただいた当選メールを見た瞬間、信じられず何度も読み直してしまいました。大変感激しております。ありがとうございます。
今までは写真で見たり解説を読んで憧れるだけで実際に手にする機会がそうそうなかった将棋駒ですが、今後はいきなり酔棋さんが作られた「静水島黄楊柾目書き駒」を自分の手元に置いておけるなんて、夢のようで本当に信じられません。
私は数年前に将棋を始めたのですが、忙しくなり指す機会はほとんどなくなってしまいました。しかし同時に工芸品、芸術品としての駒に興味を抱き始めました。使えば使うほど味わいが出てくるという魅力、作り手によって変化する駒の味わい、時とともに深みを増す漆の色合い、黄楊の部分によって変化する駒木地の模様、さまざまな書体など、大変奥深い世界だと感じております。
今回の「静水」という書体は、金井静山の資料の中にあった名のない字母をひとつの書体とし、酔棋さんが命名されたものということで、大変貴重なものであると感じています。そのような駒を初心者である私のような者がいただいてよいのかと不安にもなりますが、「使われてこそ名駒」ということですので、これを機にまた将棋を始め、大切にたくさん使わせていただきたく思います。作られた酔棋さんや将棋駒に恥じないよう、精いっぱい精進して参りたいと思っております。
この度は、本当にありがとうございました。
|
駒を手にした喜びのコメント
小倉さんは、神奈川在住の方です |
|
駒の飾りケースの前で、当選した「静水」を手にする小倉祥さん。 |
先日、駒をいただきに増山さんのお宅におうかがいしました。
当選した駒との対面や「魂入れ」の儀式をはじめ、駒を作る工程や歴史を感じさせるさまざまな駒の資料を見せていただいたり、将棋に関するお話、人生の教訓をもおうかがいすることができ、大変贅沢で貴重な時間でした。
いただいた駒を目にしたとき、あまりにも美しくて使うのがもったいないと思ってしまいました。ですが傷がつき飴色に変わった駒を見たり実際に指したりしているうちに、逆に使わないともったいないと強く思うようになりました。将棋の駒としてある以上、実戦、指し手の想い、「鼎談」などたくさん経験させ染み込ませていきたいです。
また実際に指してみると、少し小ぶりで、手にすんなりと合いなじみやすいと感じました。
書体については「静水」という名のごとく、水の流れの静けさを想起させるのと同時に、その穏やかさの中にも個性的な部分があると感じております。どことなく私と相通ずるものがあるような親近感を覚えました。
バラが描かれた根付(下写真)もいただきましたが、色の漆が使われていてとても可愛く、大変気に入っております。
また貴重な駒木地や駒も見せていただき感動しました。長年使って傷がつきながらも飴色に変わった将棋駒は、なんとも言えない深い味わいを出していました。その駒を目にしたとき、『将棋駒の世界』に書いていただいた「使われてこそ名駒」という言葉が心の奥深くにずっしりと入ってきました。使わないと駒がもったいない。こんな気持ちになるなんて、と不思議な気分です。
駒を作る工程も大変興味深かったです。一つひとつの駒木地や漆の状態などと向き合い対話しながら時間をかけて作っていく。とてつもない集中力、かけた時間、想いが、駒の一つひとついっぱいに込められていることを強く感じました。駒は単なる道具ではなく、駒師の魂がこもった作品。将棋駒の世界は、入れば入るほど深みを増していくものと実感しました。
これからは巡り合えたこの「静水島黄楊柾目書き駒」とともに、挫折を繰り返しながらも生きていきたく思います。
この度は本当にありがとうございました。心から感謝申し上げます。
|
|
色漆を使った「バラ」の根付。 |
裏に名前を入れた。 |
※お名前と応募のメールを見て、てっきり男性とばかり思っていたので、あらためて当選お知らせの電話をしたところ、若い女性であったのでちょっとビックリしました。そこで、私がよく作る「バラ」の根付(上写真)にお名前を入れて、記念に差し上げました。 |
●当選者訪問で「駒作り工程」見学!
|
おそらく2世代近くの差がある二人。 |
根付のところでも少しふれましたが、小倉さんのお名前の「祥(さち)」を「しょう」と勝手読みして、最初はてっきり若い男性だと勘違いしていました。当選のお知らせメールの返信メールのあとで、小倉さんが神奈川県在住の大学院生であったことから、それなら送付するよりもいい機会だし、近郊の方だからこちらに取りに来てもらおうと思いお電話を差し上げたのです。
そうしたら、なんと若い女性の声でしたので、駒作りおじさん(?)としては少し戸惑ってしまいました(笑い)。
とはいえ小倉さんに快諾いただき、今回の駒作り工房(拙宅マンション)訪問が実現したのです。そこで、小倉さんは、将棋駒の魅力を教えてくれた大学時代の部活の先輩・吉井孝之さんと一緒にいらしたのです。
いただいたメールから、抜粋し少しだけ小倉さんを紹介しておきます。
――現在は大学院でフランス文学を勉強中。
将棋は大学1年生のときに半年程度、大学の部活動にて勉強していて、現在はやめています。それからはほとんど指していませんので、駒の動かし方がわかる程度の初心者。また、将棋以外には、
茶道や写真撮影、美術鑑賞や映画鑑賞などが好きとのことです。
ですから、将棋駒や工房の様子などの写真を撮らせていただきたい――
ということでしたので、駒作りの工程をひととおり、お二人(小倉さんと吉井さん)にご覧いただくことにしました。まずは、新しい「静水」での魂入れの儀式をかねて、お二人に一局指してもらういました。
|
|
魂入れは、平手で進めました。右が吉井さんです、 |
書き駒の盛り上げ作業をのぞく小倉さん。 |
記念対局は、先手の小倉さんが居飛車で、後手の吉井さんがちょっと前まではやっていたゴキゲン中飛車。小倉さんが、序盤早々から飛車先の歩を切って、定跡では悪くなってしまいました。そこで、小倉さんからその対局を私(酔棋)が引き継いで指すことになりました。吉井さんの棋力をうかがうと、三段とのことだったので、その後はかなり難しくなったのですが、最後は自陣を放置していたツケが回り、結局は吉井さんの勝利に終わりました。
対局者が途中で変わるといった、少しややこしい魂入れの儀式となってしまいましたが、新しい「静水」は「将棋をちゃんと覚えてくれただろうか」と、いらぬ心配をしてしまいました(笑い)。先に紹介した小倉さんのメールにもあるように、茶道もよくご存じだから、私の標榜する「使われてこそ名駒」の精神は、小倉さんにしっかり届いていたようで、作った私としてもうれしいかぎりです。小倉さんがたとえ将棋を指す機会があまりなく、駒箱に収まっていることが多くなったとしても、おそらくこの「静水」はそれこそ静かな流れで小倉さんのこれからの人生を静かに見守っていくことでしょう。
●小倉さんの撮ったショット(駒作り編・花など)
|
|
ヘッドルーペは必需品。 |
息が詰まる書き駒の盛り上げ。 |
先にもふれたように、小倉さんは写真も趣味のひとつだそうです。
デジカメ持参で、駒作りの工程や駒の写真を撮っていきました。私の駒作りを撮ったお気に入りのカット(上写真)を、送付してもらいました。
また、
下の彫り駒は吉井さんが所蔵している駒で、この駒を小倉さんが借りたことがあり、その影響もあって将棋駒にますます興味を抱くようになったとのことです。
駒と人との出合いは、この例のようにほんの些細なことから始まることもあるようです。駒作りに携わっていいる一人として、それを踏まえてこれからも駒を作っていきたいと思うのは、けっして私だけではないのかもしれません。
|
吉井さん所蔵の「水無瀬書孔雀杢彫り駒・月山作」。 |
|
|
|
フランスに留学し、旅行したときの1枚。 |
花の伸びやかさが表現されている。 |
小倉さんのやさしさもうかがえそう。 |
■駒プレゼント(当選1名)
「静水島黄楊柾目書き駒」(第368作)紹介
別カット
|
静水島黄楊柾目
書き駒
酔棋作(第368作) |
●書体の「静水」について
|
|
金井静山の残された資料の中にあった名のない字母。 |
盛り上げ具合がわかるだろうか? |
|
「飛」と「車」が極端にずれている。 |
|
金銀の「将」の偏(○の箇所)を変更。 |
|
成桂(右)と成香(左)が似通っている。 |
まずは、今回のプレゼント駒とした「静水」という書体について、少し説明しておきます。
私(酔棋)自身も、今回初めて作る書体です。このHPの至るところにもたびたび登場する、私の所属している「将棋駒研究会」会長・北田義之氏の手元に残された、東京最後の名工とうたわれた金井静山(▼別項参照)の資料の中から、上左写真のハンコの押された字母がありました。この名のない字母は、静山が生前に自ら作ったものなのか、また誰か別な方が静山に持ち込んだものなのか、亡くなった静山に聞くわけにもいかず、まったく判然とはしません。
その字母を駒の書体にしようと、ところどころ北田氏が手を入れて私に持ち込みました。それをまた、いつもの字母紙作りと同じように、パソコンでデータにし、さらに私もところどころ手直しして一つの字母紙に仕上げました。そのような経緯から、この名のない字母を一つの書体として、「静水」と私が命名したのです。つまり、静山の「静」を1字取り、北田氏の号・如水の1字「水」を取り、合わせて「静水(せいすい)」としたものです。意味合いは「静かなる水」ですから、なかなか言いえて妙ではないでしょうか。まあ、自画持参はこのくらいにして(笑い)、穏やかな水の流れを喚起させるくらい、派手なところもあまりない書体ですが、作ってみるとそれなりに味わいも感じました。
この書体「静水」の特徴を表している思われるので、実際に作った駒のいくつかを左写真に掲載してあります。写真を見ておわかりのように、「飛」と「車」がずれています。このような処理は、他の書体でもたまに見られますが、ここまで極端なのはこの書体ぐらいのものでしょう。「金将」と「銀将」の「将」の偏は、もともとのハンコ字母は逆だったのですが、通常は「王将」と「金将」の「将」の字は大きさを除きほとんど同じ処理が多いです。それに変えて「銀将」の「将」はさらに略すものが多いです。そこで、○の箇所を逆にしたのです。駒の大きさや駒形も違いますから、まず間違うことはないとないでしょうが、「成桂」と「成香」の区別がつきにくそうです。
一見それらの短所と思われるところこそ、この書体の独自性ですから、それも含めてこの駒の当選者は慈しんで使ってみてください。間違いなく、(今のところ北田氏も未制作)誰も作っていませんから(私が依頼されればもちろん作りますが)、当分の間はこの世に当選者だけのたった一つの駒となるでしょう。
ここで掲載しているよりもさらに大きな写真が見たい方は、「フォトライブラリー」(▼別項参照)へ行って「▼オークション出品・プレゼント抽選・将棋大会」(下のほう)で、作品番号(No.368)をお探しください。
上記の「駒カード」の当選者欄にお名前を入れ、右の平箱に入れた駒に同封します。 |
|
なお、当選者(1名)にはプレゼントの駒(上写真右の平箱に入れて)の他に、いつも差し上げている駒の写真数枚、写真CD、駒カードも同封いたします。さらに余り歩で作った根付(すぐ上写真)も入れておきますので、ストラップなどにお使いください。
『駒の詩』をご覧いただいているみなさんは、すでに『将棋駒の世界』(▼別項参照)をお読みいただいている方が多いと思いますが、もしもご希望があれば、ため書き「使われてこそ名駒・棋は鼎談あり・駒の後ろに作者が見える」のどれかを書いて1冊差し上げます。当選者は、その旨をお知らせください。
■『DVD「駒を作る」』(3名)、『NHK駒シリーズCD』(3名)、『将棋駒の世界』(3名)
上記の『DVD「駒を作る」』(左写真)と、『NHK駒シリーズCD』(中写真)、『将棋駒の世界』(右写真)をそれぞれ3名の方にプレゼントします。
『DVD「駒を作る」』は、駒作りに興味のある方はもちろんのこと、そうでない方でも楽しめると思います。内容などの詳細は「ビデオ『駒を作る』」(▼別項参照)をご覧ください。また、『NHK駒シリーズCD』とは、『NHK将棋講座』(▼別項参照)に私が取材・文を担当した「駒シリーズ」を連載(1993年4月〜2000年3月)していたものを、PDFにしてCDにまとめたものです。
同じく『将棋駒の世界』に、もしもご希望があれば、ため書き「使われてこそ名駒・棋は鼎談あり・駒の後ろに作者が見える」のどれかを書いて1冊差し上げます。当選者は、その旨をお知らせください。
『DVD「駒を作る」』当選者(3名) |
田中ゆみこ(東京)・吉澤大樹(神奈川)・宮成昌孝(神奈川) |
『NHK駒シリーズCD』当選者(3名) |
荒川一男(埼玉)・掃部孝行(大阪)・小泉和章(愛知)
|
『将棋駒の世界』各当選者(3名) |
大槻高里(茨城)・加藤 勝(愛知)・佐藤秀吉(三重) |
当選者の発表は、締切日の翌日(10月13日/月曜)までに厳正なる抽選を行い、当選者に酔棋からの当選メールにて知らせます。
その後、当選者の方々には送付先のご住所・携帯番号などをお知らせいただきます。駒当選の方は、ご住所の他に必ず携帯番号もお願いします。
締切日の翌日までに連絡がいかない場合は、今回の抽選は外れということになりますので、その旨ご了承ください。また、当選者の発表は、後日HP上でみなさんにお知らせいたします。
駒が当選した方は、当選駒がお手元に届いたら、「その駒の感想と喜びのコメント」をメールでお願いいたします。
また、後日(1〜2か月ほど)でかまいませんが、当選者がその駒で指しているところの写真などを送付していただければ、喜びのコメントとともに、あらためてこのページに掲載したいと思っています。
写真を撮る場合は、他の駒プレゼント(第1回〜第10回)のページを参考にしてください。
ご面倒だと思いますが、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
|