元来、将棋駒の起源としては、駒形の木に墨で書かれた「書き駒」であったとされる。その後、時代が下って1600年前後に作られた書き駒の「水無瀬駒」が、現代につながる漆で作られた駒の源流となっている。それが、その後、「彫り駒」「彫り埋め駒」となり、幕末から明治にかけて「盛り上げ駒」の製法が完成していくのである。 |
「書き駒の下準備」として、ここでは駒木地の研磨・面取りを解説する。これらの一連の作業は、数も多く面倒なものであるからメゲないように地道に続けることが大事である。そのため、写真もかなり地味になってしまったことをご承知いただこう。
簡単にいえば、「彫り埋め駒」の完成まで、駒木地を仕上げるのが「書き駒」の下準備となる。ちなみにこでの作業は、通常の駒作りに同じところや応用できることが多いので、たとえ「書き駒」を作る予定がなくても、ぜひ参考にしていただきたい。
「中国黄楊薄虎斑」の駒木地 この「書き駒」に使用した駒木地は「中国黄楊薄虎斑」だ。それほど強い虎斑ではないが、駒によってはまあまあ出ている。駒木地で見るときと、完成した駒で見るときでは、駒木地そのものの印象も結構変わるものである。 |
1.整形研磨 全部の駒木地を、400番のサンドペーパーですべての面を研磨する。天(駒木地のてっぺん)の部分の研磨には、片減りしないようにとくに注意する。 |
2.駒木地をそろえる 同じ種類(たとえば歩)の駒木地は、合わせて大きさや厚さをそろえる。厚ささ何ミリとかこだわるよりも、実践的手段として、同じものに合わせるようにしている。 |
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3.駒底も研磨 400番での研磨が終わったら、次に水研ぎ用の800番のサンドペーパーで、水を使わずにすべての面を研磨する。このとき新聞紙を少し敷いたほうが、目詰まりしにくい。 |
4.面取りをする すべての面を研磨したら、同じ800番で引き続き面取りも行う。好みにもよるが、盤に駒がつかないところは面取りをしない。詳細は「酔棋駒作り5」を参照。 |
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5. 布ペーパーで面取り サンドペーパーでの面取りだけだと、やや角張った仕上がりになる。そこで、布ペーパー(私は600番使用)で一枚一枚やわらかい面取りにする。 |
6.水を使う サンドペーパーを1200番に替えて、今度は水を使って研磨する。適量の水を、サンドペーパーに垂らす。 |
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7. 水研ぎ研磨 このときは、駒木地の表裏だけを回す感じで研磨する。「玉将と王将」の駒銘となる駒尻を除いて、他の部分は研磨しなくてもいい。 |
8. すぐにふき取る 水研ぎすると細かい研磨に仕上がるのだが、基本的には木に水はあまりよくないと思われるので、すぐに水分を布でふき取る。 |
彫りの工程のある通常の駒作りとは異なって、「書き駒」にはそれ専用の字母紙が必要である。書き駒に使う「絵漆(弁柄漆)」をふくみやすい、「置き目紙」という和紙に字母を事前に転写しなければいけない。
書き駒用に使用する道具などは、通常の駒作りに使うものでたいていは間に合うのだが、どうしても専用のものも必要になってくる。それが、先に説明した「反転した専用字母」「絵漆」「置き目紙」などである。
「篁輝」の字母を加工 パソコンで通常に使う「篁輝」の字母を、それぞれの駒字ごとの空間を少し空け、また最終的に反転するなどの加工する。 |
1.「篁輝」反転字母 作った「篁輝」の字母紙をまずは反転する。これは書き駒の大事なところで、一種のハンコを作る感じだ。それをスーパーファイン紙に印刷する。 |
2.置き目紙を貼る 置き目紙は薄い和紙なので、そのままではコピーができない。そこで通常のコピー紙に、メンディングテープなどで、しっかりまわりがずれないように貼って留める。この方法は、タイプ用紙にコピーする通常の字母紙でも 同じだ。 |
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3.置き目紙にコピー 反転した字母を、置き目紙を貼ったコピー紙にコピーする。台紙となったコピー紙は不要で、コピーした置き目紙だけを使う。 |
4.元字母紙と共に 下になっているのが元の字母紙。上に重ねているのが置き目紙にコピーした、「篁輝」の反転字母。元の字母紙は、盛り上げるときに見本として使用する。 |