翔鶴書島黄楊上柾盛り上げ駒 |
「玉将・王将」のアップ。草書のやわらかい筆致を表現。 |
私(酔棋)としては、初めて作る書体「翔鶴」である。表裏共に「草書」の駒字は比較的珍しいほうである。他には「峰」(「第13回オークション」▼別項参照)ぐらいしか思い至らない。
もともとは、「駒づくりを楽しむ会」にいらした高野正明氏創作の書体「鶴陣(鶴翼の陣)」を、平田雅章氏(号・雅峰)が、高野氏の了解を得て「翔鶴」と命名したものであるという。「この書体の持つ華麗さを書体名でも表したかった」と平田氏は言う。サラサラとした流麗な筆致は、駒の書体というよりも、一幅の書の掛け軸を想起させる。
左に掲載したのは、上段は彫り・中段は彫り埋め・下段は盛り上げの、それぞれの工程である。駒木地は柾目がそろった「上柾」。高級駒の「虎斑」をはじめ、「根杢」「赤柾」などに人気が集中しているが、意外とこのようなそろった「柾目」も、駒マニアには好む方もおられる。派手な駒木地に目を奪われるのではなく、書体そのものをめでるという感覚なのかもしれない。
駒を頼まれたときサービスとして作る根付を、今回の依頼者にも作って差し上げた。この駒の記念でもあるので、携帯のストラップなどに使っていただけると、作者としても喜ばしいことだ。