金米島黄楊板目彫り駒 |
今回の「玉将と歩兵」。朱合漆と呂色漆のブレンドを使っている。 |
今回の「金米」は初めて作った書体である。この駒の依頼者の方が、私のところにある数多くの駒の資料を見て、「この書体で彫り駒で作ってほしい」と言われ、新たにそれを字母紙に起こし彫り駒で作ったものである。
「駒関連資料館」に掲載している「14 書体不詳島黄楊板目彫り駒・金米作」(▼別項参照)の駒が、この「金米」の源流となっている。その駒は、表が隷書で裏が篆書といったかなり風変わりで、素朴な味わいの彫り駒であった。
そのページにも書いたことを、あらためてここにも再掲しておく。
――掲載したこの駒が入っていた駒箱のフタには、「金米彫駒」と書かれているので「金米」(「きんべい」と読むものか?)が作者ということになるのかもしれない。さらに、その左隣には「金光門人」とあるところから、天童の駒師・金光(読みは「きんこう」「かねみつ」のどちらかは不明)の門人であったと考えられる――
そこで、この書体を「金米」としたわけだが、それはあくまでも便宜上私(酔棋)がつけた書体名であることをお断りしておく。また、その中に書かれている「金光」の駒も、同じ「駒関連資料館」の「28 金光黒柿彫り駒・金光作」(▼別項参照)にあるので、ご覧いただきたい。いずれもかなり古い駒で、現代の天童を軸とする駒師たちの作品とは、かなり趣を異にするものである。
ちなみに源流となった駒も、角度が鈍角でやや縦長の駒形であったので、ちょうど手元にあったそのような駒形で作ってみた。さらに、茶褐色の朱合漆に呂色漆を少しだけ加えたものにし、原本の雰囲気を醸し出してみた。どこまで表現できたかは、所蔵者をはじめこのページをご覧いただいているみなさんにご判断いただきたい。