鵞堂書島黄楊虎斑盛り上げ駒 |
素彫りの状態の「玉将」 | 彫り埋めの状態の「玉将」 | 盛り上げの状態の「玉将」 |
同じ「作品ライブラリー」の一つ前、「源兵衛清安(第327作)」(▼別項参照)で取り上げた「将棋会」に参加した植木宣隆さん(私の本職の仕事先の社長)の依頼で、この「鵞堂(330作)」を作ることになった。
依頼者の植木さんは、現在A級で活躍しているプロ棋士・高橋道雄九段とテニス仲間であったと、以前から私は聞かされていた。最近ではテニスはあまりやっていないとのことであったが、「せっかくA級棋士とお知り合いなら、植木さんも将棋が好きなんだから一局駒落ちで教わったほうがいいですよ」と、昨年雑談したときに私は植木さんに話した。そこで植木さんはやっと決心をし、今回の駒落ち対局(飛香落ち)が実現がすることになったのである。
さて、その対局をするにあたっては、「高橋九段に記念になる駒を差し上げたいので、増山さん作ってくれないか」と、植木さんが私に依頼してきたというわけだ。「書体は何にするか」「駒木地はどんなものがいいか」と植木さんは悩んだ。かつて私の「第1回・酔棋制作駒個展」(1991年11月)のとき、展示会場での駒プレゼントの企画に、植木さんは当選し「鵞堂書島黄楊柾目盛り上げ駒(第107作)」を手に入れている。そのことは「書体への誘い・鵞堂」(▼別項参照)をご覧いただきたい。そこで、同じ書体の「鵞堂」を選んだのである。総じてプロ棋士は、派手な「根杢」や「虎斑」などよりも、どちらかというと柾目系の駒を好まれるようである。そこであまり派手ではなく落ち着いた感じの「虎斑」が手元にあったので、「駒木地はこれがいいのでは」と私が進言、これで作ることになった。
2011年8月13日に、植木宅にて対局が決まった。私の駒友・三上勉さんも両対局者ともに縁があり、私と二人で植木さんの応援に駆けつけたというわけだ。まだ将棋を知らない真新しい「鵞堂」は、高橋九段によって平箱から出され、大橋流の手順で盤に並べられていく。その記念の棋譜は、下記から入ってぜひご覧ください。
序盤はなごやかに始まった。 | ▲画像クリックで拡大 |
熱戦だった植木VS高橋戦のあと、私と三上さんも高橋九段に駒落ちを教わった。ここのところ私は絶不調といえ、実力どおりのボロ負けに終わった。対局の結果はさておいて、終了後は植木さんの奥様がご用意していただいたお料理に箸も進み、将棋談議にも花が咲き、感謝と満足の対局の一日であった。