私が気に入っている書体の一つ、「巻菱湖」の盛り上げ駒である。この書体は、駒木地が派手な虎杢や孔雀杢などにも合うと思われるが、このような素朴な柾目にもまさにぴったりだ。というより、その書体の派手さは、むしろ柾目のほうがより際立ってくる気さえする。
所蔵者となった方は棋力もかなりのもので、「魂入れ」もかねて私(酔棋)と一局指すことになった。場所は、「あの駒は今・将棋酒場『一歩』」で紹介した新宿のゴールデン街の飲み屋「一歩」。軽く一杯やりながらの対局だったが、中盤の私の欲張った手が失策となって、私の負けとなる。新しい「巻菱湖」も、所蔵者の勝利を祝福しているようだった。