この駒の素彫りの状態。この段階でも赤柾は判別がつくが、完成して磨き上げると、よりいっそうその赤柾は際立ってくる。 |
この駒の依頼を最初に受けたときは、島黄楊赤柾の注文であった。その島黄楊赤柾が私の手元にはなかったので、木地師の方にその駒木地を注文した。しかし、見せてもらった島黄楊赤柾は、価格のわりにいまひとつといった感じだったので、「どうしようか」と迷うことになった。
その後、しばらくして「中国黄楊赤柾のいいものがある」と、木地師の方から連絡を受けて、その駒木地の写真を依頼者に送付したところ、この駒木地でいいということになり、この作品が生まれたのである。
かつては、島黄楊赤柾もよく出回っていたのだが、昨今では赤柾があまり人気がなくなったり、原木そのものの不足などが相まって、見かけることが少なくなったようだ。
今回の駒をご覧いただければおわかりのように、中国黄楊赤柾も島黄楊赤柾とそれほど遜色はない気がするのだが、いかがなものだろうか。
本来の「淇洲」と同じく、この駒も双玉で作った。「淇洲」の書体そのものの由来などは、別項「書体への誘い・淇洲」を参照していただきたい。