かつて同じく駒作り仲間であった永島慎二さん(「永島慎二レクイエム」参照)の追悼の意を込めて、私(酔棋)が所属している将棋駒研究会の仲間たちと、お墓参りをかねて先の日程で追悼旅行に行ってきた。
その模様を少し紹介するので、生前に永島氏を知っている方や、また漫画家としての氏の作品にふれたことのある方は、一読して故人を偲んでいただきたい。
○○家の墓ではなく、「永島慎二」とだけ書かれた墓石。赤く見えるのはイラスト。 | 墓碑銘は永島さんの自筆。 |
2台の車で分乗したそれぞれの将棋駒研究会のメンバーは、永島さんのお墓がある鎌倉の瑞泉寺で合流する。今回の追悼旅行は、みな駒に憧憬の深い仲間たち全部で9人だ。
鎌倉は多くの文人墨客が活躍したところで、古刹の瑞泉寺には高浜虚子、吉野秀雄、久保田万太郎などの文学碑や、大宅壮一、久米正雄などの墓もある。まだ紅葉の残る閑静な山道をやや登り、それぞれがお花や線香、水を入れた桶を手に持ち、比較的奥の石垣に面した永島さんが眠るお墓をめざした。
総勢9人のお墓参りで、ちょっと不釣合いだがやや賑やかなものになった。あまりしみじみとするよりも、墓石の下で永島さんも苦笑しつつも、これだけの駒作り仲間が訪れて、おそらく永島さんも寂しくはなかったのではないだろうか。
会長の北田さんから、ずらりとそれぞれが永島さんに語りかけた。 | 私も手を合わせると、永島さんのやさしいまなざしが甦ってきた。 |
駒袋には永島作の駒。線香の煙が立ち上り、永島さんがパイプを吹かしているのだろうか。 |
私は永島さんの作った駒を、レクイエム本編でも登場した三上さんは、永島さんが愛用していたパイプを持参し、それぞれ墓石に供えた。
本編でも書いたように永島さんの戒名は、「永閑印慎高美久居士」である。「高美久」は「コミック」を意味するもので、モノづくりの情熱を漫画に捧げた永島さんにぴったりだ。
ひととおりお参りをすませ、そのお墓の前でこの旅行に参加したメンバーの記念撮影(下集合写真)。
銘駒収集家の三上さんを除き、全員が駒師としての号があるので、写真とともにそれを説明しよう。駒に詳しいこのHPをご覧いただくみなさんはすでにご存じと思われるが、(号・○○)内がそれぞれの駒師としての号である。
この写真を撮っていただいたのは、平田さん(号・雅峰)であったのでここには写っていないが、他の写真をご覧いただきたい。
左から3番目の三上さんは、思い出の永島さんのパイプで一服。 |
上写真左から、蜂須賀(号・蜂須賀)、上村(号・江仙)、三上、増山(号・酔棋)、荒川(号・晃石)、高橋(号・正廣)、北田(号・如水)、杉(号・亨治)のみなさんで、先の平田さんも含めて「将棋駒研究会」の常連メンバーだ。
ちなみに、駒木地を作っているのは、北田さんと杉さんである。
鎌倉でお墓参りをすませ、途中で昼食をとり2台の車で伊東へ向かったが、観光シーズンに少し外れているとはいえ、道路の込みぐあいはそれなりのもので、伊東に着いたころにはすっかりと周囲は暗くなっていた。
まずは大きな野天風呂で温泉を満喫して疲れを癒し、定番の宴会となるが、駒研のメンバーは意外なことに酒飲みが少なく、これだけの人数でビールが3本ほどだ。永島さんを偲びつつ談笑し、鮮魚をはじめとするうまいものに舌鼓を打ち、宴会はほどなくお開きとなる。駒研の旅行は宴会よりも、そのあとの遊びに興じるのが定跡となっている。
永島さんの思い出と駒談議に、話が咲く。 |
飲むよりも箸が進むのが、駒研の旅行というもの。 |
宴会のあとは、将棋と麻雀に興じるのが定番である。わざわざ東京から、盤駒を旅館まで持ち込むのが、駒研の旅行らしいところ。今回は永島さんの追悼のこともあったので、自作の駒(龍山安清)も持参したが、永島さんを偲んで墓石に供えた永島作の駒で、私は指すつもりであった。
なお、これらの対局に使った永島作の駒は、「駒のみ拡大」でよくご覧いただきたい。
永島さんに縁のある、三上さんと私との対局。 |
蜂須賀さんとの飛車落ちの対局で、上手の私はお神酒指し。 |
私が持参した三上さんとの対局の駒は、レクイエム本編でも紹介している永島作の「紫電」である。なんともいえない漆の色が、特徴の駒だ。この対局は仕掛けから分かれまでは私がややいいと思ったが、終盤の難しい寄せを間違え、私の惜敗に終わった。どうやら永島さんの応援があっても、私の棋力が追いついていなかったようだ。それとも永島さんは、三上さんを応援したのだろうか(笑い)。
蜂須賀さんとの対局は、上手から角交換する一種の裏技で、私の飛車落ちの得意戦法「お神酒指し」(左右の金銀が対照的で、お神酒に見えるところから)だ。ややそれに面食らったか、下手の蜂須賀さんは駒損の無理攻めとなり、上手の私の辛勝となった。この駒は、三上さんが所蔵している永島作の「安清くずし」である。
今回は、杉さんがアガったようだ。ということはフリ込んだのは? |
最近では、手積み麻雀も珍しくなりました。 |
麻雀は、北田さん、杉さん、荒川さん、平田さんの面々で行われた。この4人はたまにだが、盤以外にも雀卓を囲むこともあるようだ。今回の勝負は、平田さんと杉さんが勝ち組で、負け組みは北田さんと荒川さんということになった。
かつて一度だけだが私の友人宅で、私も永島さんと麻雀をご一緒したこともある。そのときも負けず嫌いな永島さんの一面が垣間見えたことも、今は懐かしい思い出となってしまった。
宿泊した旅館の中庭にて。 |
今回の旅行には参加できなくて残念でしたね。 永島さん、ゆっくりと永眠してください。 |