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「良明書」の字母。上段は、半紙にご本人が書いたもので、下段がそれを字母紙にしたもの。 |
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「玉将」と「歩兵」のアップ。 |
駒を長いこと作っていると、いろいろと変わった依頼も来る。今回のご依頼者・石井氏にはかなりの数の「彫り駒」と「書き駒」を私(酔棋)もこれまでに作ってきた。それも一風変わった隷書や篆書が、お好みであった。この「作品ライブラリー」をはじめ10組以上掲載されているはずなので、他も探してご覧いただきたい。
私が『酔棋字母帳』(2019年6月現在90種以上)に作ってある隷書や篆書を、石井氏はすでにコレクションしてしまった。それらに飽き足らずついに自らの駒字、それも表隷書・裏篆書で作りたくなったのである。そこで、その隷書・篆書を書道教室に通ってあらためて習った。石井氏の構想から1年半ほどで、今回の駒の書体「良明書」が実現したというわけだ。
すぐ上に掲載した字母(玉将・歩兵・と金)は、上段が半紙にご本人が実際に書いてきたもの。薄く描かれた駒形はかすかに見える程度だが、駒字を書くときは駒形に2文字書いたほうが、後の工程でもバランスなど比較的うまくいく。それらを私がパソコンを駆使して字母紙に仕上げた。もちろん途中工程をご本人にお見せし、ご意見をうかがいながら完成させた。
左に掲載した写真(玉将・歩兵)を見ればおわかりのように、かなりの太字だ。完成した駒を見たとき、石井氏はこの太字に満足していた。つまりこの駒は、今のところまさにこの世にたった1組しかないことになる。依頼される私が言うのも少し変かもしれないが、駒マニアの駒に対する思いの強さは、尋常ではないともいえよう。ちなみに駒銘「良明書・酔棋作」も、もちろん石井氏がしたためたものだ。
今回のように字母紙からあらためて作るような場合は、通常の駒制作費の他に、字母紙作り費用が別途かかることをお断りしておく。
※もっと大きな写真を見たい場合は、「フォトライブラリー」(▼参照)で、「作品ライブラリー・434」を探してください。