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龍山安清島黄楊虎杢盛り上げ駒
第318作(飯島栄治氏所蔵)


別カット


「王将」(上)の裏(下)に、実際に昇級した日付を彫り埋めで入れた。
 2009年11月ころに、私(酔棋)の駒友・三上勉さんから、「懇意にしているプロ棋士・飯島栄治六段が、駒を作ってほしいと言っている」とのお話をうかがった。三上さんから飯島六段の棋才や人柄なども聞いていたこともあり、駒を作ることを快く引き受けたのである。
 そこで年末の押し迫った12月末に、私(酔棋)と三上さん、飯島六段の3人でオフ会や将棋大会でおなじみの私の地元「割烹・桂」で一献傾けることになった。当日、拙宅に飯島六段にいらしていただき、お好みの書体と駒木地を選んでもらい、作ることになったのが「巻菱湖(第320作)」(▼別項参照)である。その駒の詳細は、そちらをご覧いただきたい。
 少し裏話をすると、実はそのときまでに作った駒の制作番号は、第317作までであった。だから、その「巻菱湖」は第318作となるはずであったのだが、飯島さんが「キリのいい番号がいいかな」とおっしゃったので、2つ飛ばしてその駒は第320作となったわけである。
 正式に駒制作依頼をお受けしたこともあり、私が一席設けた先の飲み会の最中に出てきた話の一つが、三上さんによる「飯島六段が順位戦(C1)で昇級したら、俺がお祝いの席を設けるから、増山さん駒をもう一つお祝いとして作ってあげなよ」というものであった。私もその話にのっかり、結局作ることになったのが、ここで紹介する「龍山安清」である。
 「龍山安清」は自らの愛用駒(第195作・▼別項参照)にしているくらい、私も好きな書体である。その書体の由緒ある流れからも、また実戦に向く指しやすい駒字というところからも、飯島六段のようなプロ棋士が所蔵するにはふさわしい書体といえるだろう。写真(上)の駒は、来宅の折に私がいただいた飯島六段自筆の扇子に、駒を散らしてみた。
 みなさんもご存じのとおり、「第68期順位戦」では最終戦を待たずに好成績で飯島六段は昇級した。私としても新たに駒を作るのは大変なのだが、それはそれでまことに喜ばしいことでもあるので、順位戦の進行をひそかに見守っていたのである。
 昇級が確定した2010年2月半ばくらいに、差し上げる新しい駒について飯島六段と連絡をとった。そのころ飯島六段もかなりお忙しくなっていて、お会いすることはできなかったのだが、メールで新たに書体などを決めていただき、早速制作にとりかかった。なお、「せっかく作っていただくのならば、記念にもなるし駒木地もいいものにしたい」ということで、飯島六段が駒木地代を負担し、今回の「龍山安清島黄楊虎杢(第318作)」が完成したのである。
 そこで制作番号も、今度はまだ空いていた「第318作」となり、これが制作順と違い逆順となった小さな真相である。写真(左)をご覧いただくとおわかりのように、「王将の裏」に今回の昇級を飯島六段が実際に知った日付を入れてある。プロ棋士にとっての、昇級のうれしさと重みがこの駒に刻まれたことになる。
 その後、先に完成した「巻菱湖」は郵送し、三上さん主催による、「飯島六段昇級のお祝いの会・お祝いの駒記念対局」(2010年6月1日)が行われた。
 そのときの記念対局(増山VS飯島・飛車落ち)は、下記から入ってご覧いただきたい。

贈呈した「龍山安清」で対戦
棋譜は▼棋譜ページへ
※棋譜ページを開いて、「18.増山VS飯島」戦を選択してください。

差し上げた新しい駒による記念対局が始まった。飯島栄治プロ六段(左)VS増山雅人四段(右)。 終盤の局面、上手玉(上)が端にかわしたところ。詰むや詰まざるや。
▲画像クリックで拡大

左から、三上、増山、飯島、植木のみなさんによるお祝いの乾杯!

 記念対局は、飯島宅の一室で行われた。飯島六段は、仲間のプロ棋士たちと研究会を開くために、盤駒はもちろんのこと脇息や対局時計まで準備してある本格的な対局場を、自宅にしつらえてある。プロ棋士が切磋琢磨するそのような神聖な場所で、記念の「飛車落ち」を指していただいた。私としても身に余る対局となったわけだから、恥ずかしくない将棋を指すことだけを心に期していた。
 対局の内容そのものは棋譜をご覧いただくことにして、終盤がななかなかおもしろい局面(上右写真)となったので、そのことに少しふれておきたい。この局面、下手の持ち駒は金2枚と銀(歩は関係ないので含まない)。もちろん実戦なのだが、まったく詰将棋といってもよい局面ができたのである。画像を拡大し、下手の手番で詰ましていただきたい。ここから、9手詰めになっているのである。解答は、実戦棋譜をご覧いただきたい。
 記念対局終了後、2009年の「第2回将棋大会」に出場した植木宣隆さんも駆けつけ、4人(左写真)よる「飯島六段昇級の昇級お祝いの会」が、三上さん主催で近くの居酒屋で行われた。将棋好きの集まりだから、当然なことに最初から最後まで将棋談議であふれた楽しい一夜を共に過ごした。
 今年度の順位戦をはじめとする各棋戦の活躍を、団塊の世代のおじさんたちだけでなく新しい「龍山安清」も見守っていますから、飯島六段これからも対局頑張ってください!

 

 

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