|
3.北海の潮風を浴びた駒は甦った
父親の夢を乗せた中座五段の駒 |
|
清安書島黄楊柾目盛り上げ駒
|
傷ついた駒は奨励会時代を見守っていた この駒は、北海道で漁師(鮭とか蟹)をしていたプロ棋士・中座真五段の父親が、もともとは持っていたものである。将棋好きの父親は、北海の厳しい潮風の中で、漁師仲間と幾度となくこの駒で対局に興じたことだろう。 「木村駒」復活への顛末 木村の駒に限らず、何十年にもわたって使っていると、盛り上げ駒はどうしても漆が磨り減ったり飛んだりと傷んでくる。私(酔棋)は、たまに依頼を受けて、影水(宮松影水)、木村などをはじめ名工の駒を盛り上げし直すなど、修理することがある。 |
|
![]() |
![]() |
|
「錦旗」は、中座五段がこのHPを見て決めた書体。
|
ひとつの記念として、王将の裏に「中座飛車」、玉将の裏に名前の「真」を入れた。
|
![]() |
|
「錦旗」を使って、中座(右)VS増山(左)の記念対局(飛車落ち)。
|
前述の駒の修理をきっかけとして、その後、三上氏と一緒に中座五段と私がお会いする機会も増えた。
2002年、中座四段は順位戦で成績がよく昇段も確実と思われたころ、昇段祝いとして私が駒を作って差し上げ、三上氏がお祝いの一席を設けるということに何となく決まった。しかし、残念ながら最後で昇段を逃し、結局その会はお流れとなった。
捲土重来を期した翌年の2003年も、中座四段の快進撃は再び続き、ご存じのとおり4月に五段昇段を果たした。それから昇段祝いの駒を作りはじめ、いろいろと他にも忙しく、2003年11月1日にやっと「昇段祝いの会」(その模様は後出)を、三上氏邸で催すことができたのである。
その昇段祝いの駒が、「錦旗」(写真上)である。どんな書体で作るか、中座五段はこのHPをよくご覧になって決めたという。引き渡しの当日、飛車落ちの記念対局を私はお願いした。
この対局の前にも飛車落ちを教わったことはあったが、まだ勝たしてもらっていないので、そろそろお返しをしたいなとは思っていた。当然なことに「駒の鼻薬」は全然効かず(笑い)に、見事返り討ちにあった。つくづく若手のプロは、勝負にはからいことを自覚させられた。
新しい駒に将棋を教える、「魂入れ」の意味合いもある記念対局でもあったので、私としても気持ちよく(?)投了することができた。
![]() |
![]() |
| 「巨泉流」という飛車落ち戦法で臨んだ、仕掛けの局面。 | 上手に角捨ての豪腕手が決まり、いくばくもなく下手の投了となった。 |
|
棋譜は▼棋譜ページへ ※棋譜ページ(▼日付順)を開いて、「増山四段VS中座五段」戦を選択してください。 |
ちなみに「錦旗」の写真の下の本は、『横歩取り 8五飛戦法』(日本将棋連盟刊)という中座五段の著書である。その「8五飛戦法」は、通称「中座飛車」とも呼ばれているので、王将の裏に彫り埋めで入れたのである。
中座五段は、この「錦旗」を研究会などで使うときに、王将と玉将の裏の「中座飛車」と「真」を棋士仲間に冷やかされることがあるという。
プロ間でも、その「8五飛戦法」の定跡はすさまじく日進月歩していて、本家本元の中座五段も勉強しなければついていけなくなる、状況だという。将棋も駒作りも、どちらも精進が大切なことを私も思い知らされた。
「中座五段昇段祝いの会」に参加したのは、ご自宅で会を催した三上氏、中座五段、私(酔棋)、駒研の会長・北田氏、駒収集家の松枝氏の5名(写真下右参照)である。
私との記念対局が終わったあとで、他の3人も3面指しで、中座五段から指導将棋を受けた。三上氏(角落ち)、松枝氏(二枚落ち)は惜しくも負けたが、北田氏(二枚落ち)はからくも勝った。その後、「昇段祝い」の宴を過ごし、楽しい会も終了となった。
![]() |
![]() |
|
3面指しでも、よどみがなく中座五段の指し手は鋭い。
|
中座五段を真ん中に囲み、「昇段祝い」の記念にパチリ。
|
![]() |
| 中座五段の年賀状より。 |
2003年11月23日に中座真五段が、中倉彰子女流初段と結婚したのは、すでに将棋ファンならご存じのとおりのこと。その披露宴に私も呼ばれていたが、駒の展示会と日付が重なっていたので残念ながら辞退した。2003年は、中座五段にとって五段昇段と結婚が重なり、忘れられない年になることだろう。
その華やかな陰に、先の「木村駒」と昇段祝いの「錦旗」も、中座五段のこれからの活躍の支えになることを、これらの駒にかかわった私としても祈念している。
両方とも、ご自分の研究用として並べたり、研究会などで使っているから、それは間違いのないことだろう。また、ときにはこの駒を使って、ご夫妻で将棋を指す(平手で、その代わり持ち時間などはハンデあり)こともあるという。プロにとっては本当は勉強にちがいないのだが、新婚のお似合いの夫妻が仲よく将棋を指すところを、想像するだけでもほのぼのとしてくる。