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9.これぞまさにあの駒は今・第1作―懐かしき8ミリの詰将棋


別カット

無双薩摩黄楊板目彫り駒
雅人作(第1作)
増山雅人所蔵

麻雀牌から将棋駒へ   

恥をさらすような出来栄えだが、これも私の駒作りの軌跡にはちがいない。

 タイトルどおり、「これぞまさにあの駒は今」を今回はご紹介する。1977年、私(酔棋/増山雅人)が駒を作った、記念の第1作「無双彫り駒」である。駒銘も、この駒をはじめ4作目までは「雅人作」を使っていて、5作目から「酔棋作」にした。
 駒作りを始める前は、私は指し将棋に結構はまり、アマチュアの大会「都名人戦」などによく出場していたものだった。だが、結局は予選トーナメントを突破するまでには至らず、指し将棋にそろそろ限界を感じはじめていた。ちょうどそのとき、当時の『将棋世界』の広告に、熊澤良尊氏主宰の「駒づくりを楽しむ会」が掲載されていた。
 私が7歳のときに亡くなっている父親が、戦後すぐに麻雀牌を作っていて、その1牌の「南」が自宅に残されていた。「父親が麻雀牌を作っていたのなら、子供の私が将棋駒を作るのもいいかな」と頭をよぎり、「南」の牌が私にささやいているような気がした。そこで、早速、「駒づくりを楽しむ会」の会員(1988年より、北田義之氏主宰の「将棋駒研究会」に参加)となり、以来30年以上にわたる私の駒作り人生が始まったのである。
 その始まりの駒が、このレアもの(?)の「無双彫り駒」だ。薩摩黄楊板目の堅い駒木地を整形するのに、かなり苦労したことさえ、すでに懐かしい思い出となっている。右の写真の「玉将・歩兵」のアップをご覧いただければおわかりのように、彫り跡がギザギザで恥ずかしいことこの上ないが、これも第1作ということで勘弁していただきたい。さらに駒字に入れているのは、まだ漆ではなくカシューであった。駒作りをこれから始めようという方は、この駒を見てぜひ自信をつけていただきたい(笑い)。
 完成した当時は少しは使ったこともあるが、見るからにその下手さ加減にうんざりするので、自然と使うことも手入れすることもなくなり、駒袋にしまいっぱなしという状態であった。そこで、「初心忘れず」という意味も込めて、みなさんにあらためてご覧いただこうと思い、ここに掲載することにしたというわけだ。30年以上たって、「初心に帰る」というのも少し変な気もするが、偽らざる私の気持ちである。

8ミリが「YouTube」に

まずは将棋倒しから始まる。 タイトルの「煙詰」。
これから詰め手順が始まる。 もうすぐ収束の局面。

 「指す・書く・作る」と勝手に豪語するくらい、将棋に関することはこれまでにいろいろとやってきた。
  まず「指す」は、文字どおり指し将棋のことで、一応並みのアマチュア四段といったところ。実戦の棋力は、「棋譜ページ」(▼別項参照)をご覧いただいたとおりで、最近はあまり自信がない。
 次の「書く」は、原稿を書いたり編集したりを指し、「BOOK INFORMETION」(▼別項参照)にその仕事のいくつかは掲載してある。
 最後の「作る」は、もちろん言うまでもなく駒作りのこと。そう考えると、本当に将棋関することは何でもやってきたつもりだが、唯一苦手にしている分野が「詰将棋」である。
 詰将棋は、2ケタの手数だとあまり解く気にならなくなるし、作るのもどうやら才能はなさそうである。だからこれまでも、この分野にはあまり入り込まないようにしてきた。そうはいっても、詰将棋の深淵さや芸術的なところには魅かれるところもあるのだが、苦手にしていることには変わりはない。
 先の「無双」が完成した1977年に、その駒で記念に何かしてみようと思いついた。そこで、当時8ミリに凝っていた友人に相談し、「アニメ的な詰将棋」をこの駒を使って製作することにしたのである。
 どうせ作るならということで、格調が高い「煙詰」を題材に選んだ。詰将棋好きなら誰でもご存じの、江戸時代の贈名人・伊藤看寿(1710〜1760年)の名作中の名作である。時の将軍に献上した『将棋図巧』の第99番が、「煙詰」といわれるもの。盤上の駒がだんだん消えていき、最後には手数117手で玉も含めて3枚残り詰め上がる。まさに芸術的味わいのある、素晴らしい詰将棋である。
 撮影するにあたっては、私が一枚ずつ手で駒を動かし、友人がコマ落ちで撮るといった、手作業の極みで1日がかりで製作した。たまに私の手が映っていて、編集でフィルムを切ってつないでもらったりもした。
 ライティングに失敗していて、盤上が光りやや見にくくなっているが、そこは少し許していただきたい。何といっても30年以上前に作った8ミリなので、不備はいっぱいあるが、それすらも昔日の懐かしき思い出でもある。
 今回それを変換して、「YouTube」(下記から入れる)で見られるようにしてもらった。上写真は、その「煙詰」のそれぞれの場面である。詰将棋に興味のない方も、「無双」の駒がアナログ的な動きをするところをぜひご覧いただきたい。

「煙詰」YouTube
▼掲載ページへ

「YouTube」には、「煙詰・詰将棋・将棋駒・酔棋」などでも検索することができる。なお、6分32秒の作品。


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