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書体への誘い 18 俊光(花押)<としみつ・かおう>


別カット

俊光(花押)薩摩黄楊柾目書き駒
酔棋作(第278作)
江田行宏氏所蔵


字の流れを推測し、駒字として完成

原本「俊光」
字母「俊光」
酔棋「俊光」

 別項の「駒資料館・俊光(花押)」「作品ライブラリー・俊光(花押)/第274作」と合わせてご覧いただきたい。
 もともとは、資料館に掲載した古い書き駒をもとに、駒の書体として私が作り直した。歳月とともに、漆が剥離(すり減って)してよくわからない「龍王」などは、将棋駒研究会会長・北田義之氏に相談して、字の流れを推測していただき駒字として完成させたものである。
 左に掲載したいくつかの駒字(原本の駒・字母紙・掲載の駒)をご覧いただければ、その苦労と駒字としての完成までがおわかりいただけるはずである。書き駒にかぎらずこのような漆の剥離は、盛り上げ駒にもいえることだが、駒としてのその働きからか「龍王」「龍馬」「成銀」などに、漆の磨耗がより顕著に現れる。当然なことに盤面にあまりふれることの少ない、「玉将」や「金将」はわざと傷つけたりしなければ、漆は飛んだりすり減ることは少ないものだ。
 駒銘に書かれた「花押(かおう)」については、他でも述べたが一応ここでもふれておく。駒銘の写真などを見ていただけばおわかりのように、「俊光」の下に字にも絵にも見えるものがあるが、これが「花押」である。古来サイン代わりに使われた一種の記号で、駒以外にもいろいろと使われてきた。原本となった駒では、「玉将」「王将」ともに「俊光(花押)」の同じ駒銘が書かれていた。


■「俊光(花押)」の由来

写真ではわかりにくいが、太い部分の漆は実際には高く盛ってある。面取りも、通常より多めに取った。

 本物の2作のうち1作は「駒資料館」に掲載した駒、もう1作は1999年に取材したことのある「関西将棋会館」の「将棋博物館」所蔵のもの。これらのどちらとも駒銘の「俊光(花押)」は、それほど大差はなかった。
 「将棋博物館」所蔵の駒は、御城将棋に使われたとされる大橋家(将棋三家)伝承の駒(約300年前)といわれている。そのことから考えると、作者と思われる「俊光」は同じく御城将棋に使われた水無瀬駒(水無瀬家)の流れを汲む関係者だったのではないだろうか。
 「将棋駒の銘は水無瀬家の筆をもって宝とす」といわれた、能書の誉れ高い公家の水無瀬兼成やその孫の兼俊の残した水無瀬駒とこの「俊光」を比べると、どことなく同じような香りを感じるのは私だけではないだろう。
 そのような経緯から、この駒銘を「俊光(花押)」としたわけである。

 

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