「玉将・歩兵」でその深彫りがわかる。 |
「日本一の深彫り師」と呼ばれた大阪の駒師・八代目駒権(駒銘写真参照)の「竜司」だ。駒銘は太い漆で書かれているのが、特徴でもある。伝統の超深彫りでその名を馳せた八代目駒権(本名・赤松元一/1982年没)は、「盛り上げ駒は駒ではない」という持論で、自分の作品に自信と誇りをもっていたといわれている。
左写真の「玉将・歩兵」をご覧いただくと、「駒の裏側が透けて見える」と表現されたその深彫りが見て取れるだろう。駒銘の「大阪竜司」と「大阪」がついているものは、私(酔棋)も初めて見た。通常の駒銘は、下段写真(駒権花押・竜司)のように入っている。この作品は、拙著『将棋駒の世界』(▼別項参照)の130ページに掲載している。また、駒権は主に薩摩黄楊で作られたものが多いが、まれに島黄楊でも作られていたようだ。
この「竜司」も駒権の作る書体の一つだが、他には「命を削るように彫った」といわれる「蜀紅」や「坂田好」などもよく知られている。どちらにしても、深彫りに合う駒権独自の書体である。
竜司薩摩黄楊柾目彫り駒・駒権作(花押)。 |