直す前の「銀将」。 | 直した「銀将」。 |
修復前の「水無瀬」。 |
修復後の「水無瀬」。 |
駒マニア垂涎の的とされる、影水作の「水無瀬」を私(酔棋)が修復したものである。この「駒関連資料館」に掲載している「38 水無瀬島黄楊虎斑・影水作(酔棋修復)」(▼別項参照)と同じく完全修復である。作者の影水については、「名工の轍・宮松影水」(▼別項参照)ご覧いただきたい。
左の扇三段の形の「水無瀬」は、上段が直す前、下段が直した後である。もともとこの駒は、ネットオークションに出品されたものを、今回の依頼者(所蔵者)が入札したものだ。そのとき写真を見て、根杢のいい木地なのに漆が少し飛んでいるのがわかっていた。そのままでは駒がかわいそうと感じ、直してもらうことを考えたという。
そこで実際に届いて手にしてみると、それぞれの駒の真ん中が爪でこすったものなのか、ほとんどがへこんでいたのには依頼者も驚いた。そこで、私のところに直しを依頼してきたというわけだ。私の作品もかなり所蔵しているし、古くからの信頼できる収集家でもあるので、今回の直しをお引き受けしたのである。
実際に直すとなると、真ん中のへこみにかなり手を焼くことになった。つまり漆をはがすだけでは、真ん中のへこみが残ってしまいどうにもならないのである。そこで、依頼者に「かなり削らないとどうしようもないこと」を伝えた。了承のうえ削ったら、最終仕上がりがやむをえず薄くはなったが、書き駒作りで慣れているからか、何とか修復でき所蔵者にも喜んでいただいた。