この駒は、下記に述べる2つの理由で珍しいものである。
まずは、駒木地が島桑製というのは、銘駒ではあまり見かけない。その桑の味わいは、写真でもわかっていただけることだろう。
次に駒銘に見られるとおり「龍山作」とは、別項「名工の轍・豊島龍山」で紹介している作者と同じ工房の作にはちがいない。ただし、実際にこの駒は、同じく別項「名工の轍・金井静山」で紹介している金井静山の作なのである。
かなりの駒マニアには、このような駒は「龍山静山」といわれ知られていることである。駒銘を見比べれば、その違いがおわかりいただけると思う。
つまり龍山亡きあと、龍山の流れをくむ静山が、遺族に頼まれて「龍山」の駒銘で作った駒なのである。かつての名工たちは、東京の下町という近隣の地域で活動したからか、駒作りのうえでは独特の交流をもっていたようである。