「康斎」の「玉と歩」。手だれた盛り上げがよくわかる。 |
「康斎」の盛り上げ駒だ。この書体は、『駒の詩』では初めて紹介する。
「康斎」はこのような書体の他に、「董仙」にも似通ったものも存在する。今回、掲載した「康斎」は、「と金」のくるりと回った表現が変わっている。作者の「茂翁作」は、たまにネットオークションなどに登場する駒師だが、実際にはどなたなのかは判然とはしない。
かなり昔の私(酔棋)の駒作り仲間でもあった、アマチュアの駒好きの故・木村茂夫氏がその主かとも考えたが、それもはっきりとした根拠はない。ネットではかつての名工の一人、木村義雄十四世名人の実弟・木村文俊(▼別項参照)の弟とかの説もあるようだが、先と同様にやはり根拠はない。
左にも書いたが、その盛り上げの技術はかなりのもので、手だれているといえよう。また、駒銘もなかなかその技術を感じさせる。このような駒を拝見し紹介するとき、つくづく駒の世界はまだまだ掘り起こせば、奥が深いことが思い知らさせてくれる。