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菱湖書島黄楊杢盛り上げ駒・宮松作
(稲垣忠之氏所蔵)


別カット

 島桑の箱を開けると(上写真)、このように駒が収められている。下にあと2段あり全部で3段重ね(下写真)になっているのである。それぞれに駒形にカットされていて、一枚一枚がしっかりと収まるように作られている。

 この「駒資料館」では駒を紹介するのはもちろんのこと、駒を収納する駒箱についても駒とともにいくつか紹介してきた。
 すぐ上の駒銘をご覧になればおわかりのとおり、マニア垂涎の的といわれる宮松作(宮松影水)の「菱湖」である。経年とともに使われてきたからか、惜しむらくは漆の減りなどがいくつか見られる。本来は別項の「名工の轍・宮松影水」(▼参照)に掲載すべきだろうが、この駒が収められた駒箱もなかなかのものなので、ここで取り上げたというわけだ。
 かなり変形な島桑の駒箱の上蓋裏に書かれた書が、何といってもすごいのである。「虎魄」(読みは「こはく」か)と素晴らしい書をしたためたのは、昭和27年に、初の名人を奪取した大山康晴十五世名人である。大山名人の成績や棋界への貢献などはここで述べるまでもないので割愛するが、とにもかくにも大名人であったことに異論を挟む人はまずいないだろう。
 この駒箱には「昭和28年」と書かれているから、名人を獲得してまだ間もないころだ。名人戦をはじめとする当時のタイトル戦などで使われた駒か、大山名人ファン所蔵の駒か、そのあたりのことがうかがい知れるだろう。「虎魄」とは、文字どおり解釈すると、「虎」の「気魄」と推察できる。この「菱湖」にふさわしい名称かもしれない。
 ちなみに「書体への誘い・菱湖」(▼別項参照)でもふれているが、「菱湖」と「巻菱湖」はともに同じ書体のことである。宮松影水も、作者名を「宮松作」「影水作」の両方を使っていたし、「菱湖」「巻菱湖」をともに駒銘として使っていた。
 左の写真で紹介したように、単なる駒箱ではなくいろいろと工夫され、かなり凝った作りといえるだろう。駒はもちろん魅惑的なのだが、この駒箱も相当に魅かれるものであった。駒マニアというものは、このようなものも考えて作り出すのだから、実に興味深い人々といえるだろう。

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駒の詩