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酔棋流書き駒3―書き駒の目止めと字母転写

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書き駒用目止め

 書き駒用目止めといっても、何も特別な工程があるわけではない。「酔棋流駒の作り方5」で解説した彫り埋め駒での目止めと、駒字のあるなしにかかわらず実はまったく同じなのである。
 唯一異なっていると思われるのは、駒字を駒木地に転写する前に目止めを施す順序の違いである。つまり、目止めが施され仕上げ磨きされた駒木地を先に作ってから、そこに駒字を漆で転写するのである。

書き駒用目止めに使うもの
書き駒用目止めとしては、「水性との粉」(白に少量のけやきを混合する)、漆マット、雑巾などの布類、サンドペーパー1200番を使う。

1.水性との粉を含ませる

  事前に漆マットを水につけてやわらかくしておく。それを軽く搾って、その状態に水性との粉をたらして含ませる。

2.駒木地に付着させる

  1組の駒木地に表裏のみに、水性との粉を付着させる。これを2回繰り返す。ただし、「玉将と王将」の駒銘だけは、付着させる。このとき駒のサイドや駒尻などに余分なとの粉がつくが、あとでそれをはがす。

3.こんな感じに付着

  漆マットがない場合は、目の細かいスポンジでも代用できる。表と裏には全面的に付着させる。

4.すぐにふき取る

  付着した水性との粉は、雑巾などですぐにふき取る。これを2回繰り返す。

5. 布できれいに

 やわらかい布で、駒木地の表面をきれいにする。

6.はみ出した水性との粉をはがす

  気をつけながら一連の作業をしても、駒尻やサイドにとの粉が付着してしまう。サンドペーパー(1200番)で駒尻やサイドに付着した、との粉をはがす。天の部分は片減りしないように注意する。


駒木地に字母を転写

 ここで以下に解説する工程が、通常の駒作りともっとも異なる書き駒独特の方法である。
 大ざっぱにいえば、上記のように水性との粉を付着させた駒木地に、仕上げ磨きをしてから字母紙を漆(絵漆)で転写する作業である。当然なことに駒木地の1セット全部に行わなければ、書き駒の完成とはならないわけだから、手間と時間のかかる作業なのだ。また、駒字を転写するときに位置がずれたり曲がったりしたら、そのまま駒としてでき上がってしまうので、、なりの注意を要する。
 絵漆は、随時調節(片脳油で)して適切な硬さや量を自分で見つける。

漆が付着した「王将
この状態で半日くらい放置して漆を乾燥させる。駒字の位置が適切でも、多くの漆が付着した場合は、軽くプラスチッククロスで余分な漆を研磨する。

1ラッピングフィルムで研磨

  水性との粉を施した駒木地を、さらに仕上げの研磨をする。使用するラッピングフィルム(4000番)は、ちょっとしたゴミで駒が傷つくから、ティッシュでふき取りながら回す感じで、表裏だけを研磨する。

2.プラスチッククロスで研磨

  最後の研磨として、プラスチッククロスを使用する。この場合は、駒尻やサイドも含めて駒全体を研磨する。

3.磨き上げた駒木地

 きれいに磨かれた駒木地。 この一連の磨き作業は、通常の瀬戸引きよりも、私はいいと思っている。

4.字母紙をならす

  置き目紙(和紙)にコピーした反転字母紙を、瀬戸(表面が丸いものならOK)を使って表裏ともに表面をならす。和紙の毛羽立ちを抑えるためだ。

5. 字母紙を切る

  反転字母紙を一枚ずつ切る。同じ字母紙は、1枚で駒4枚くらいは使えるので、駒の枚数分の字母紙は必要がない。反転字母を印刷する置き目紙は、ツルツルした面に印刷する。

6.絵漆を使用する

  字母紙の転写用としては、絵漆(弁柄漆)を使う。これはやや赤みを帯びた濃茶色である。絵漆は、他の漆でも代用はできると思う。

7.反転字母に筆で書く

  反転字母紙に筆(私はインターローン1026という形状記憶筆を使用)で、縁取りする感じで絵漆で、駒字を書いていく。

8. 余分な漆をふき取る

 ティッシュを重ねて、余分な漆をふき取る。そのまま行うと、駒木地にベチャっとつきかねないからである。実際の盛り上げは、見本を見ながら作業するので、駒字のあたりがわかる程度でいい。

9. 駒木地を押す

 駒字がほぼ中央に来るように、左右天地を確認しつつ駒木地を手に持ち、ハンコを押す感じで行う。これでズレると台無しとなる。失敗したときは、すぐにプラスチッククロスで研磨するか、それでも漆が残った場合は、水研ぎからやり直す。

10. 字母紙を切る

  絵漆が付着した「と金」。ちなみに「歩」や「と金」なら一度に5枚くらいは転写できる。1日くらいおいてから盛り上げの作業をしたほうがいいが、急ぐ場合はすぐにでも可能である。

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