同じ「作品ライブラリー・宗歩好彫り駒(第389作)」
(▼別項参照)のところで少しふれた「宗歩好」の盛り上げ駒である。中国黄楊の極上の虎杢の駒木地でも、この書体の太字の迫力はあまり減じられない気がする。というより、さらにすご味が増すという感じだ。
左に掲載したのは、上から彫りの状態、彫り埋めの状態、盛り上げの完成時とそれぞれ並べてみた。依頼者がこの駒を頼むとき、「宗歩好」は「双玉」だが、できれば特別に「王将」をもう一枚作ってほしいとのことであった。ただし、まったく同じ「王将」の駒木地がなかったので、「本来の駒木地と比べると少し落ちるが、それなら用意できる」とメール(駒木地写真を添付)にて知らせたところ、「それでかまわない」と了解を得て「王将」を余分に作ったのである。上の駒銘写真には、「王将」も加えて撮ったものを掲載した。また、左の彫り埋めの状態には、余分な「王将」(駒銘は「宗歩好」と入れた)を入れてある。
これで今年は、「宗歩好書き駒(第378作)」
(▼別項参照)、「宗歩好彫り駒(第389作)」「宗歩好盛り上げ駒(第390作)の3つの製法で作ったことになる。前回にも書いた「もしも、これで万が一『宗歩好彫り埋め駒』を頼まれるようなことがあったなら、すべての製法を作ることになるわけだ」が、どうやら実現することになりそうである。というのは、前回の「宗歩好」の記事を読んで、別な完成した駒を取りにいらっしゃるときに、新たに「宗歩好彫り埋め駒」を依頼したいという方がいるのである。
来年の名人戦第1局にたぶん使用されると思われる奥野作「宗歩好」
(▼別項参照)に合わせて、その方は「宗歩好彫り埋め駒」で名人戦を楽しみたいという思いのようである。本当におもしろいもので、いろいろな縁が一つの駒を通して広がっていく……。