- 酔棋

駒のことなら何でもわかる!!

トップ 作り方 作品 フォト オークション 情報室 書体 名工 資料館 BOOK メール・問い合わせ

羽前島黄楊絹柾書き駒
第324作 (「将棋駒研究会」展示会場プレゼント)


別カット

「玉将」を見ておわかりのように、太い細い強弱の字の流れが、この書体の魅力だ。
 この作品も、別項で紹介している「将棋駒研究会」の展示即売会(▼別項参照)に出品のため、新たに字母紙を起こし制作したものである。そちらをご覧いただければおわかりのように、会場へ当日ご来場いただいたみなさんへの抽選によるプレゼント駒の一つでもある。当選者が確定したあかつきに、もしもその方の了解を得られれば、所蔵者としてお名前と写真を掲載させていただきたいと考えている。
 私(酔棋)が初めて作ったこの「羽前」という書体について、少しふれておく。辞書などによると「羽前」とは、「旧国名の一。明治元年(1868)出羽(でわ)を羽前・羽後と南北に2分した南の部分。東山道13か国の一。現在の山形県の大部分にあたる」と書かれている。だから、現在では将棋の町として知られる山形県天童市なども含まれるのかもしれない。よってその地方の書体とも考えられるが、この書体の原本は「豊島作」(「書体への誘い・豊島龍山」▼別項参照)の盛り上げ駒であったので、現在も天童に伝わる伝統的な書体とは趣を異にしている。
 これはあくまでも推察にすぎないが、豊島龍山が当時の山形の駒に影響を受けて字母紙を作ったものではないだろうか。他に「羽前」を作っていた駒師としては、「木村作」(「書体への誘い・木村文俊」▼別項参照)も、私はかつて見たことがある。その書体は、もう少し無骨な感じがした気がする。筆の流れの強弱(太い細い)が、えも言われぬって魅力となっている。「玉将」をよく見ると、下の「将」の字が末広がりなところは、江戸期末期をはじめとする昔日の駒によく見られる特徴ともいえよう。
 将棋駒研究会会長の北田氏から、この駒木地「絹柾(柾目が細かいところから)」を提供していただいた。美しい絹柾に、「羽前」の味わいがマッチしていると思うのは、私だけではないだろう。もうおなじみだと思うが、この駒は昔も行われていた、置き目紙を使い駒字を漆で転写して作った書き駒である。ちなみに駒銘だけは、正式な盛り上げの製法で作ってある。上記で説明したような字そのものの強弱だけではなく、漆の高低もかなり意識して作った。つまり、高い(太い)ところを漆で一度で盛り上げると、乾いたときにまれに凹みが生じることもあるので、その部分は下地を盛ってからの二度盛りとしてある。そのあたりの工夫や駒木地との相性も、展示会場にいらしてじかにご覧いただきたい。

 

 

「作品ライブラリー」トップに戻る

トップへもどる
駒の詩