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源兵衛清安薩摩黄楊稲妻杢盛り上げ駒
第275作(飯島栄治氏所蔵)


「金将」の裏(左)を見ていただくとわかりやすいが、稲妻が上から落ちてくるイメージの木味だ。このようなところから、「稲妻杢」と呼ばれているのだろう。 素彫りの状態の「王将」をはじめとする大駒である。薩摩黄楊の「孔雀杢」でも同じだが、「稲妻杢」も堅さが一定でないため、彫り跡がスパッとしないので、彫りにくい駒木地といえよう。

 別項の「作品ライブラリー・源兵衛清安(第272作)」と同じ書体だが、こちらは派手めな薩摩黄楊の「稲妻杢」である。駒木地の違いで、同書体の同じ盛り上げ駒でも、趣がこのようにかなり変わってくる。
  ちなみにこの駒木地には、私にとって忘れられないことが含まれている。別項の「永島慎二レクイエム」で紹介している私の心の師でもある、漫画家の故・永島慎二さんにまつわる一つの思い出だ。そこに書いてあるエピソードを要約すると……。

 ――永島さんが亡くなる半年ほど前に、三上さんと一緒に拙宅に訪れたときに、この「稲妻杢」を見て、「それ譲ってくれないか」と言う。そのときには、永島さんはもう駒を作っていないというより、ご病気で作ることができなかったので、「永島さん、お作りになるのですか?」と私はお聞きした。すると、「手元に気に入った駒木地がないと寂しいんでね」と言う。「では譲るのではなく、差し上げますよ」ということで、永島さんはうれしそうに持ち帰った――

 その後、残念なことに亡くなられ、遺品の一つとして私の手元に再び戻ってきたのが 、この「稲妻杢」なのである。そこで、永島さんとも生前深いおつきあいのあった私の駒友の三上さんに、この駒木地で記念の駒を作ることになった。
 このHPでも紹介している将棋大会などのイベントや『将棋駒の世界』の執筆、それに駒制作依頼が重なっていたため、延び延びとなっていたが、このたびやっと完成したのである。魂入れの儀式として、この駒での対局はまだすんでいない。所蔵者の「三上VS増山」の天国の永島さんに捧げる記念対局は、いずれHP上でアップするつもりである。その節はご覧になって、駒好きの漫画家をぜひ思い出していただきたい。

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駒の詩