- 酔棋

駒のことなら何でもわかる!!

トップ 作り方 作品 フォト オークション 情報室 書体 名工 資料館 BOOK 掲示板

酔棋制作駒「第2回個展」 -使われてこそ名駒-
メモリアル


自宅の一室を展示会場にしたから、いらっしゃったみなさんにはちょっと狭かったかもしれません。それでも身近に駒を感じて、ひとりでも駒ファンになっていただきたくここで催しました。

個展を終えて

 ■開催日程
 ▽2005年3月19日(土曜)・20日(日曜)
 ▽11時〜18時

 上記の日程で、駒師としての号・酔棋こと増山雅人の自宅にて、「第2回個展」を開催しました。個展にご来場いただいたみなさんに、あらためてこの場でお礼を述べさせていただきます。


 2001年9月にホームページ『駒の詩』を開設してから、早いもので3年以上が過ぎ、ありがたいことにこのHPへのアクセス数も、2004年の末にはすでに50,000を超えました(2009年2月現在130,000超)。
 私(酔棋)が駒を作りはじめたのは、第1作が1977年5月に完成ですから、今年(2009年)で30年以上になります。私自身もこんなにも駒を作ることになるとは、夢にも思いませんでしたが、2005年3月で制作数も250組を超えました(2005年5月現在254作)。
 そのHPアクセス数50,000超え、制作数250組超えなどを記念して、「酔棋制作駒『第2回個展』-使われてこそ名駒-」を開催したのです。
 今回の個展では、従来からの私の駒をご覧いただいてきたみなさんをはじめ、初めてHPを通してみなさんの個展来場を募り、多くの方々に来ていただきました。自らの表現のひとつとして駒を作りつづけてきた者としては、みなさんに作品を見ていただくことは、この上ない喜びであり、作者冥利に尽きる思いでいっぱいでした。
 開催場所である東京近郊の方々はもちろんのこと、遠くは愛媛や仙台からの方々もいらしていただき、駒についてもみなさんといろいろとお話ができて、私自身もとても有意義なひと時を過ごせたと、あらためて感謝しています。
 また、現在は病気療養中にて、ご覧いただけなかったのは残念ですが、同じ駒作り仲間である漫画家の永島慎二氏(2006年没)からは、お祝いの花をいただき感謝してもしきれません。さらに、このたびの個展開催で、設営や運営などを手伝っていただいた、私の友人の三上氏と高橋氏、また個展パンフに力をかしていただいた山中氏には、感謝の言葉もないくらいです。
 みなさんほんとうにありがとうございました!




「第2回個展」コンセプト
使われてこそ名駒

黄楊という天然の木の宝石に
悠久の流れを汲む数々の書体を
印刀で刻み、漆を盛り上げ
勇壮・優雅を五角形に収める
やがて歴戦の歳月を経て
擦り減った駒字が物語る
使われてこそ名駒

 上記の言葉は、酔棋制作駒「第2回個展」でコンセプトとした「使われてこそ名駒」を喚起するものです。また、これらは「第2回個展パンフレット」(下記参照)の表紙にも掲げましたから、ご存じの方も多いと思います。
 酔棋自身が惚れた将棋そのものと駒を、駒作りという観点から表現してみたものです。ですから、この「使われてこそ名駒」は、まさに酔棋の駒作りの目標でもありコンセプトといえるのかもしれません。
 1991年に開催した「酔棋制作駒個展-棋は鼎談なり-」(▼最下段をご覧ください)のあと、数年たってから私の造語「使われてこそ名駒」を使いはじめたと記憶しています。そこで次の個展開催にあたっては、この言葉を肝に銘じたいと、前から考えていました。

 第2回個展パンフレット
 個展開催中に自作のパンフレット(制作協力/山中氏)を頒布いたしました。実費として500円いただきましたが、実質的な制作コストはそれ以上かかったかもしれません(笑い)。まだ、手元に残してありますので、駒を依頼された方に差し上げたりして、それなりに活躍(?)しています。
 B5判両面カラー印刷で、全部で12ページです。今回出品した駒や、HP『駒の詩』の紹介をはじめ、私の全作品リスト(簡略版)などです。それらの一部を下記に掲載しますので、興味のある方はご覧ください。

◎それぞれをクッリクしてください
表紙 ▼巻頭言 ▼出品作ライブラリー1 ▼2 ▼3 ▼全作品リスト

※全作品リスト(簡略版)をご覧いただけばおわかりのように、最近はともかくかつては「不詳」が多くなっています。私としてもいずれははっきりしたいものと思いますが、当時の記録があいまいでやむをえないことですので、苦笑いしつつも懐かしさもひとしおです。


出品作について

※展示した駒写真などはリンクでご覧ください!

 ■作品の内訳
 数作の販売作品の他に、私の代表作でありおなじみの「水無瀬紫雲虎斑」(第150作)などの数作の非売品をはじめ、数多くの参考出品作を展示しました。
 参考出品作とは、今回みなさんにご覧いただくために、以前にお譲りしたり差し上げたりした方からお借りした駒です。ご協力いただいた方々は、別項「『駒の詩』第2回オフ会」にも出席していただいた榎本氏、松枝氏、三上氏などをはじめとして、他にも古くからの私の友人たちです。その中には、「酔棋制作駒作品ライブラリー」にも掲載していない駒も多くありました。

狭さもひとつの親近感? ショーケースの駒を見る。
食い入るように駒を見る。 おなじみの駒を手にする。

 作品展示は、全部で32作で、書体数は24種に上りました。古いものは手元に置いてある第1作の「無双」はともかくとして、1989年制作の「坂田好」(第66作)から最新作(個展当時)の「龍山安清」(第252作)までの全32作でした。
 その中でも、「作品ライブラリー」にもすでに掲載している「董仙」は、盛り上げに木地呂漆を使い自分好みに仕上げたもので、第250作の記念作となりました。
 同じく「作品ライブラリー」に掲載している「淇洲」(第241作)「無劍」(第245作)「宗歩好」(第248作)は、個展を見がてら購入者や制作依頼者が作品を受け取りにいらっしゃいました。

 ■開催中のオークション(入札)など
 このHP「酔棋からのお知らせ」をご覧いただいている方にはご存じのとおり、個展開催中の2日間だけ会場にて駒の入札を催しました。
 その入札の駒は、中国黄楊虎斑盛り上げ駒の「龍山安清」(第252作)です。最低価格10万円からスタートし、参加者が5人で最高価格をつけた塩井氏が158,000円で落札しました。比較的リーズナブルで落札され、提供した私としてもよかったと思っています。
 裏話としては、実はこの駒は開催日直前に完成したので、出品できるかどうかが心配でしたので、出品できただけでホッとしたのが実情です。ただ不思議なことに、期日に間に合わすように一気に作ったからか、駒としての勢いが出ており、意外といい仕上がりになったのではと、ちょっと自負しています。

入札箱(左)と入札駒。 抽選の薩摩黄楊の駒木地。

 また、個展開催の翌日(21日)が締め切りであった駒オークションの「巻菱湖」(第233作)も展示しました。その展開などの詳細は、別項「第5回酔棋制作駒オークション」をご覧ください。
 先の3月中旬に応募を締め切った、「第2回酔棋制作駒プレゼント」抽選の当選者の郡司氏も、友人とご一緒に個展にいらっしゃいました。制作したばかりの「宗歩好」(第254作)の彫り駒がそれで、個展開催中には駒木地のみを展示しました。
 5月下旬に駒を完成させ、郡司氏にお渡ししました。その模様は、別項「第2回駒紹介」をご覧ください。

 ■個展開催中の対局用の駒
 出品作の中から下写真の盛り上げ駒の3作を、個展開催中に対局用の駒として、会場にいらっしゃったみなさんにリビングを開放し、実際に指して使っていただきました。

画像拡大

かなり使っているから、ところどころに対局の傷が見られる。

画像拡大

実戦で使われるようになってから、この時点で10年は過ぎた。

画像拡大

3作の中では、最も新しい。所蔵者もそれほど使っていないようだ。


 「龍山安清」(第195作・1999年)はふだんから私が日常的に使っている駒で、別項の「作品ライブラリー・龍山安清」にも掲載してあります。虎斑の「巻菱湖」(第145作・1994年)は三上氏に譲った駒で、別項「あの駒は今・銘駒収集家は棋聖を苦しめた」でも詳しく紹介しています。「宗歩好」(第202作・2000年)は、当時高橋氏に差し上げた駒です。
 これらの盛り上げ駒で対局が始まると、駒好きはやはり将棋好きなのか、対局見物にギャラリーが集まっていました。とくに金子タカシ元アマ竜王の駒落ち(二枚落ち)対局には、見ている人も一手一手に魅入られていたようでした。
 この様子を見るにつけ、駒は使われると輝きを増してくることが、あらためて思い知らされました。もちろん実戦で指すわけですから、よく見れば細かな傷がところどころについてしまいますが、それさえもひとつの魅力と感じるのは、私だけではないでしょう。
 これらの駒が、必ずしも「使われてこそ名駒」とはいえないのはもちろんですが、「それを目標に駒を作りたい」とあらためて感じました。

金子元アマ竜王(左)辛勝。 対戦相手は代わる代わりに。
龍山安清の指し心地は? 私(酔棋)も一局指しました。
コーヒーでひと休み。 お茶を飲みつつ観戦。

 ■駒好き仲間と駒談議
 
かつて私が編集した本(『角命戦法』など)の著者・木屋太二氏(写真右)が、女流プロの草分けとして知られる蛸島彰子五段を連れて会場にいらしていただきました。
 そこでお二人と私と三上氏(写真後)とで、右写真のようにパチリと記念撮影。お二人とは駒をご覧いただいたあとに、しばらくみんなで駒談議。
 蛸島五段は、私の使っている「龍山安清」の王将1枚玉将2枚の組み合わせの駒に興味をもち、書体も同じ「龍山安清」の彫り駒で、そのような駒(王将1枚玉将2枚)を作ってほしいと依頼されました。
 自らの研修会で使用する駒で、通常の王将と玉将の他に双玉の組み合わせができるのがいいとのお考えでした。今年の秋前には完成させるつもりですので、いずれ「作品ライブラリー」に掲載する予定でいます。楽しみにしていてください。

歓談の合間に駒の手触りを。 駒研の北田会長も対局観戦。

 その他のご来場のみなさんとも、同じ駒好き仲間ですので駒談議をたくさんしました。その中で、古い駒を持参した方もいらっしゃいました。いくつか拝見しました駒のうち、別項「駒関連資料館」にすでに掲載した駒もあります。ちょっと珍しい駒「源兵衛清安」ですので、まだ見てない方はぜひご覧ください。
 
 今回の「第2回個展」に足をお運びいただいたみなさん、ほんとうにありがとうございました。
 予定なさっていても、残念ながら諸事情で来られなかった方や、今回は見合わせた方々も、もしも第3回個展があれば(?)、ぜひ足をお運びください!

酔棋制作駒個展(第1回)-棋は鼎談なり-
1991年11月2日〜4日

 1991年11月に行った1回目の「酔棋制作駒個展-棋は鼎談なり-」を振り返って、少しここに紹介してみます。

出品作の駒がズラリと並ぶ。 多くのみなさんが来場!
文机を持ち込み駒作り実演。 当時は若かった(笑い)。

かなり前に手放した。

 会場は東京・高田馬場にある「ギャラリー麦」。制作数100組を記念した個展でしたが、当時実際に集めることができた出品作は60作ほどでありました。この個展が終わったあとに疲れからか、持病の喘息で苦しんだことも、今では懐かしい思い出と なっています。
 また、このときに会場にて駒プレゼント抽選を行い、当選した方のお好みの書体で作ったのが、別項「書体への誘い・鵞堂」で紹介している第107作でした。
 この個展開催にあたって、駒木地を作っている友人から100組記念として島黄楊孔雀杢をいただきました。それで作ったのが、「宗歩好」(第100作/上写真)です。
 「宗歩好」は私の好きな書体のひとつでもあり、得意にしていますので今もよく作ります。ただし、現在では字母紙を改良しましたから、当時とは趣がかなり異なっています。

手作りパンフレット。 原田九段揮毫の色紙。

 「棋は鼎談なり」のパンフレットの題字とイラストは、漫画家の永島慎二氏(別項「漫画家・永島慎二レクイエム」参照)が、この個展のために描いてくれたものです。 内容は、酔棋流駒作りの紹介や酔棋作品のリストなどです。現在のように、当時パソコンはまだ普及していなかったものですから、コピーを駆使しての手作りでした。もしも、当時のパンフレットを現在も お持ちの方は、一種のレアものかもしれません(笑い)。
 色紙「心月輪の駒」は、昨年(2004年7月)に亡くなられた原田泰夫九段が、当時の個展のときに持参していただいたものです。 ちなみに「心月輪」とは、良寛和尚の遺墨だとのことです。この色紙を見ると、将棋を愛し、良寛を敬愛していた原田九段が偲ばれてきます。

 

トップへもどる
駒の詩